呻吟語 / 外篇・詞章・文章に八要有り
文章有八要,簡、切、明、盡、正、大、溫、雅。不簡則失之繁冗,不切則失之浮泛,不明則失之含糊,不盡則失之疏遺,不正則理不足以服人,不大則失冠冕之體,不溫則暴厲刻削,不雅則鄙陋淺俗。廟堂文要有天覆地載,山林文要有仙風道骨,征伐文要有吞象食牛,奏對文要有忠肝義膽。諸如此類,可以例求。
新字:文章有八要,簡、切、明、尽、正、大、温、雅。不簡則失之繁冗,不切則失之浮泛,不明則失之含糊,不尽則失之疏遺,不正則理不足以服人,不大則失冠冕之体,不温則暴厲刻削,不雅則鄙陋浅俗。廟堂文要有天覆地載,山林文要有仙風道骨,征伐文要有吞象食牛,奏対文要有忠肝義胆。諸如此類,可以例求。
書き下し
文章に八要有り。簡・切・明・盡・正・大・溫・雅なり。簡ならざれば則ち繁冗に失し、切ならざれば則ち浮泛に失し、明ならざれば則ち含糊に失し、盡くさざれば則ち疏遺に失し、正ならざれば則ち理以て人を服するに足らず、大ならざれば則ち冠冕の體を失ひ、溫ならざれば則ち暴厲刻削、雅ならざれば則ち鄙陋淺俗なり。廟堂の文は天覆地載有るを要し、山林の文は仙風道骨有るを要し、征伐の文は象を吞み牛を食らふ有るを要し、奏對の文は忠肝義膽有るを要す。諸の此の類の如きは、例を以て求む可し。
現代語訳
文章に八つの要があります。簡、切、明、尽、正、大、温、雅です。簡でなければ繁雑冗長に失し、切でなければ浮ついて漠然とし、明でなければ曖昧になり、尽くさなければ抜けが出、正でなければ理が人を従えるに足りず、大でなければ堂々とした体を失い、温でなければ荒々しく刻く、雅でなければ卑しく浅く俗になります。朝廷の文は天が覆い地が載せるようであるべきで、山林の文は仙人の風と道士の骨があるべきで、征伐の文は象を呑み牛を食らう勢いがあるべきで、奏上と応答の文は忠の肝と義の胆があるべきです。この類は、例に従って求められます。
解説
文章の要を八つ挙げ、それぞれ欠けた場合の失敗を対応させます。簡、切、明、尽、正、大、温、雅。前半四つが形の面、後半四つが質の面です。そのうえで用途ごとの風格が四つ示されます。朝廷、山林、征伐、奏対。共通の八要に、場面ごとの色を重ねる形で、文章論として最も体系的な一段になっています。共通の八要に、場面ごとの色を重ねる形です。
この章句が説くこと
八要簡切明尽正大温雅用途風格
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