呻吟語 / 内篇・應務・我事に就き、事我に就かしめず
君子之處事也,要我就事,不令事就我;其長民也,要我就民,不令民就我。
新字:君子之処事也,要我就事,不令事就我;其長民也,要我就民,不令民就我。
書き下し
君子の事に處するや、我事に就くを要し、事我に就かしめず。其の民に長たるや、我民に就くを要し、民我に就かしめず。
現代語訳
君子が事に処するときは、自分が事のほうへ寄るのであって、事を自分のほうへ寄せさせません。民の長となるときは、自分が民のほうへ寄るのであって、民を自分のほうへ寄せさせません。
解説
歩み寄る方向を、常に自分の側からにせよと言います。事に対しても民に対しても同じです。自分の型に合わせさせれば楽ですが、それでは事も民も歪みます。前に出てきた、聖人は物に随って形をなすという段と同じ構図で、こちらは対等ではなく明確に自分から動けという指示になっています。統治の基本姿勢を示した一段です。

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見るこの章句が説くこと
歩み寄り統治自分から民型
関連する章句
-
『君子訓』巻之下一秦始皇の子二世皇帝の曰、凡天下を有つを貴しとするは、唯意を恣にし、慾を極めて楽む故なり。下を治むるには、唯法度を厳しくして下を制すれば、民上を犯さずして乱起らずと言へり。是秦の天下を失へるゆゑんなり。秦より以下、天下を治むること能はずして、天下を失ひ、身を亡ぼせる人多きは、皆此ゆゑなり。天下を有ちては、唯善を行ひて、広く民を憐み恵みて、万民各其所を得るを以て、楽とすべし。
-
『初学訓』巻之四一士は、王公大人より下士にいたるまでをいふ。いにしへ、士を立てし本意は、農工商ををさめ養はしめんためなり、民に養はれんためには非ず。凡土地を多く領する人は、我が身ひとりに私せず、倹約にして、奢と私慾なく、民をやしなふを以て心とすれば、其家長く久しく、財宝みちみちて、身の利養ゆたかなり。いにしへ、からやまとの賢君、身に倹約を行ひ、おごりつひえをなし給はざりし故に、たびたび民の貢物をゆるし給へども、後には、倉にたから満ち満ちて、米腐り銭なは朽ちて断れたりとかや。又、公卿より下つかた、士庶人に至るまで、身ををさめて、君によく仕ふれば、君のやしなひを得、財禄をたもちて、利養は求めずして、おのづから其中にあり。しかれば、士たる人は、その官職を専らつとめて、利養は求むべからず。
-
『呻吟語』外篇・世運・氣化の罪に非ざるなり世界は一般に是れ唐虞の時の世界なり。黎民は一般に是れ唐虞の時の黎民なり。而るに治は古に若かず。氣化の罪に非ざるなり。
-
孔子家語・六本孔子曰わく、「舟は水に非ざれば、行かず。水舟に入れば、則ち没す。君は民に非ざれば、治まらず。民上を犯せば、則ち傾く。是の故に君子は厳ならざる可からざるなり、小人は整一ならざる可からざるなり。」
-
『君子訓』巻之下一世間に多くの人を殺すこと四あり。刑兵歳病なり。一には、刑を誤りて科なき者と科軽き者とを殺す。二には、わが身乱をおこして科なき敵味方を多く殺し、又我が不仁無礼なるによりて、人に兵乱を起さしむるなり。三には、水旱風虫の災にあひ民多く餓死す。四には、民諸の病にかかり、殊に疫病はやりて人多く死するなり。此四の物は皆よく人を殺す。此内、刑と兵とは人に係り、歳と病とは天にかかる。されど、四のものは、倶に人民を殺すに至らずして活す道あり。まづ刑を以て云はば、民を恵んで衣食を足らしむれば、民盗をせず、科人少し。其上に訴を能く聞分け、理非直曲を明かにすれば、罪なき人を殺さず。兵を以て云はば、仁義を行へば、人怨み背く者なくして兵乱起らず。
-
『童子問』卷中問ふ。文帝は百金の費を惜しみて、敢へて露台を作らず。而るに文王は則ち台を為り沼を為る者は、何ぞや。曰く、先王の城を築き門を造り、台榭苑囿の類を創むるは、一は以て国の為にし、一は以て民の為にす。其の国の為にする者も亦民の為なるのみ。徒に遊観の為に敢へて興作するに非ざるなり。魯人長府を為る。閔子騫曰く、旧貫に仍らば之を如何。何ぞ必ずしも改め作らん、と。春秋に一土木の興りも必ず書する者は、民力を重んずればなり。夫れ広堂大厦は、倉廩の積に起こる。倉廩の積は、民の耒耜に出づ。耒耜の微、積みて斗升の粟と為る。斗升の粟、積みて倉廩に充つ。倉廩の積、溢れて広堂大厦と為る。人皆広堂大厦の成るは倉廩に起こることを知りて、本耒耜の微に出づることを知らざるなり。聶夷中の詩に曰く、禾を鋤きて日午に当たる、汗は滴る禾下の土。誰か識らん盤中の餐、粒粒皆辛苦なるを、と。其の国の為民の為に非ずして、漫りに興作する者は、邦本を固むる所以を知らざるなり。夫の文王の台沼を為るがごときは、民と楽しみを同じくするの至りにして、庶民子のごとく来たり、日ならずして之を成す。槩して之を論ずべからざるなり。