呻吟語 / 内篇・應務・勢は均しかる可からず
曰:「勢不可均。勢均則不相下,勢均則無忌憚而行其胸臆。三軍之事,卒伍獻計,偏裨謀事,主將斷一,何意見之敢爭?然則善天下之事,亦在乎通者當權而已。
新字:曰:「勢不可均。勢均則不相下,勢均則無忌憚而行其胸臆。三軍之事,卒伍献計,偏裨謀事,主将断一,何意見之敢争?然則善天下之事,亦在乎通者当権而已。
書き下し
曰く、「勢は均しかる可からず。勢均しければ則ち相下らず、勢均しければ則ち忌憚無くして其の胸臆を行ふ。三軍の事は、卒伍計を獻じ、偏裨事を謀り、主將一を斷ず。何の意見か敢へて爭はん。然らば則ち天下の事を善くするは、亦た通ずる者の權に當たるに在るのみ」と。
現代語訳
答えて言う。力は釣り合っていてはいけません。力が釣り合えば互いに下らず、釣り合えば憚りなく自分の思いのままに振る舞います。三軍の事では、兵が案を出し、副将が謀り、主将が一つに断じます。それでどんな意見が争えるでしょうか。とすれば天下の事をうまく運ぶのは、物事に通じた者が権を持つかどうかにかかっているだけです。
解説
前の段で、正しい者同士がぶつかると事が壊れると述べた続きです。原因は力が釣り合っていることにあるとし、対策として軍の指揮系統を挙げます。兵が案を出し、副将が謀り、主将が断ずる。意見の多様さは保ったまま、決める人を一人にするという設計です。合議の限界と、決定権の集中の必要を説いた実務的な一段になっています。
この章句が説くこと
決定権合議勢指揮設計