呻吟語 / 外篇・廣喻・近ごろ險ならずと以為ふは、卻つて是れ險なり
某數過棧道,初不敢移足,今如履平地矣。余曰:「君始以為險,是不險;近以為不險,卻是險。」
新字:某数過棧道,初不敢移足,今如履平地矣。余曰:「君始以為険,是不険;近以為不険,却是険。」
書き下し
某は數しば棧道を過ぐ。初めは敢へて足を移さず。今は平地を履むが如し。余曰く、「君始めは以て險と為す。是れ險ならず。近ごろ險ならずと以為ふは、卻つて是れ險なり」と。
現代語訳
私は何度も桟道を通りました。初めは足を動かすこともできませんでした。今は平地を歩くようです。私は言いました。あなたが初めに険しいと思ったのは、実は険しくなかったのです。近ごろ険しくないと思っているのが、かえって険しいのです。
解説
慣れの話に、鋭い切り返しを置きます。恐れていた時期は用心していたので実は安全で、慣れて怖くなくなった今が最も危ない。危険の所在が、道ではなく構えにあることが示されます。前の段で語られた、慣れれば安らぐという常識が、そのまま覆される形です。同じ体験から正反対の結論が引き出されています。同じ体験から、正反対の結論が引き出されます。
この章句が説くこと
桟道慣れ油断逆転構え
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