呻吟語 / 外篇・治道・漆器の諫は其の有るを慎むなり
漆器之諫,非為舜憂也,憂天下後世極欲之君自此而開其萌也。天下之勢,無必有,有必文,文必靡麗,靡麗必亡。漆器之諫,慎其有也。
書き下し
漆器の諫は、舜の為に憂ふるに非ざるなり。天下後世極欲の君此れ自り其の萌を開くを憂ふるなり。天下の勢ひは、無ければ必ず有り、有れば必ず文る。文れば必ず靡麗なり。靡麗なれば必ず亡ぶ。漆器の諫は、其の有るを慎むなり。
現代語訳
漆器についての諫めは、舜のために憂えたのではありません。天下後世の欲を極める君主が、ここから芽を開くことを憂えたのです。天下の勢いは、無ければ必ず有るようになり、有れば必ず飾ります。飾れば必ず華美になります。華美になれば必ず亡びます。漆器の諫めは、有ることそのものを慎むのです。
解説
舜が漆器を作ったことへの諫めを、舜への心配ではないと読み解きます。後世の君主がここから始めることを憂えたのだ、と。そして四段の必然が示されます。無ければ有るようになり、有れば飾り、飾れば華美になり、華美なら亡ぶ。止まる地点がありません。だから慎むべきは華美ではなく、有ること自体になります。治道篇の終盤で、贅沢の議論が起点まで遡られた一段です。

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本の中身を見るこの章句が説くこと
漆器萌四段必然起点
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『呻吟語』外篇・治道・人情の竇を開かず君子の風俗に於けるや、先王の禮を守りて儉約是れ崇び、妄りに事端を開きて以て長ず可きの漸を貽さず。是の故に漆器は金玉に至らざるも、之を刻鏤して止まず。黼黻は庶人に至らざるも、錦繡もて牆屋を被ひて止まず。民貧しく盜起こるも顧みざるなり。嚴刑峻法も禁ずる莫きなり。是の故に君子は其の事端を謹み、人情の竇を開きて小人無厭の欲を恣にせず。
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