呻吟語 / 内篇・談道・先難後獲は、德を立て功を立つる第一の張主
先難後獲,此是立德立功第一個張主。若認得先難是了,只一向持循去,任千毀萬謗也莫動心,年如是,月如是,竟無效驗也只如是,久則自無不獲之理。故工夫循序以進之,效驗從容以俟之,若欲速,便是揠苗者,自是欲速不來。
新字:先難後獲,此是立徳立功第一個張主。若認得先難是了,只一向持循去,任千毀万謗也莫動心,年如是,月如是,竟無効験也只如是,久則自無不獲之理。故工夫循序以進之,効験従容以俟之,若欲速,便是揠苗者,自是欲速不来。
書き下し
先難後獲は、此れは是れ德を立て功を立つる第一個の張主なり。若し先難は是なりと認め得ば、只だ一向に持循し去りて、千毀萬謗に任せて也た心を動かす莫かれ。年も是くのごとく、月も是くのごとく、竟に效驗無きも也た只だ是くのごとし。久しければ則ち自ら獲ざるの理無し。故に工夫は序に循ひて以て之に進み、效驗は從容として以て之を俟つ。若し速やかならんと欲せば、便ち是れ苗を揠く者なり。自ら是れ速やかならんと欲して來たらず。
現代語訳
難しいことを先にして得ることを後にする。これが徳を立て功を立てる第一の柱です。もし難しいことを先にするのが正しいと分かったら、ただひたすら守り続けて、千の謗り万の中傷にも心を動かしてはなりません。年もこのように、月もこのように、ついに効き目が無くてもやはりこのようにする。長く続ければ、自然と得られない道理はありません。ですから工夫は順序に従って進め、効き目はゆったりと待つのです。もし急ごうとすれば、それは苗を引き抜く者です。急ごうとしても来ないものです。
解説
論語の先難後獲が、徳と功の第一の柱とされます。そして続け方が示されます。謗りに動じず、年も月も同じように、効き目が無くても同じようにする。効果が出ないことを続ける理由として、順序に従うという一点だけが置かれます。最後に孟子の苗を引き抜く話が引かれ、急ぐこと自体が到達を遠ざけると結ばれます。成果が出ないあいだをどう過ごすかが、この一段のほんとうの主題です。
この章句が説くこと
先難後獲順序待つ揠苗
関連する章句
-
『呻吟語』内篇・應務・處事の道君子の事に處するは、之を主とするに鎮靜有主の心を以てし、之を運らすに圓活不拘の用を以てし、之を養ふに從容敦大の度を以てし、之に循ふに推行有漸の序を以てし、之を待つに序盡必至の效を以てす。又た未だ嘗て心を勤めて效遠きの悔有らず。今人事に臨み、才かに安排し去りて、又た躊腸に耐へず、草率含糊にして、事と拂亂す。豈に幸成無からんや。競に處事の道を成さず。
-
『呻吟語』内篇・應務・久しき時と得る時と相鄰る需つに當たりては久しきを厭ふ莫かれ。久しき時と得る時と相鄰る。若し其の久しきを憤りて之を決絕せば、是れ斯須に忍ぶ能はずして、前勞を甘棄し、後得を坐失するなり。此れ事に從ふ者の大戒なり。若し事體を看得ること審らかならば、便ち必ずしも需たず。即ち之を需つこと久しくとも、亦た當に速やかに去るべし。
-
『呻吟語』内篇・修身・不苟は先づ個の耐煩を要す德に進むは苟せざるに如くは莫し。苟せざるには先づ個の耐煩を要す。今人は只だ躁心有りて煩に耐へざるが為に、故に一切苟且にして卒に大防を破りて顧みず、大義を棄てて為さざるに至る。其の始めは皆な一念の苟に起こるなり。
-
『呻吟語』内篇・談道・第一步十分に理會せずんば、第二步を說かず大道に一條の正路有り、道に進むに一定の等級有り。聖人の人に教ふるは只だ示すに一定の成法を以てし、人の自ら理會するに在り。一步を理會し得れば、再び說きて一步を與ふ。其の第一步十分に理會せずんば、也た第二步を說き與へず。是れ人を苦しむるに非ず、等級原と是くのごとし。第一步一寸を差へば、也た第二步に到り得ず。孔子の賜に於けるや、才かに說きて他に「一貫」を與ふるに、又先づ他を「多學して識る」の一語もて難ず。仁者の事に至りては、又說く、「賜や、爾の及ぶ所に非ず」と。今の人は口を開けば便ち學脈を講じ、便ち本體を說く。此を以て後學を接引す、何ぞ癡人の前に夢を說くに似たる。孔門に此の教法無し。
-
『呻吟語』内篇・修身・小しく屈して大いに伸ぶるを求めず小しく屈して以て大いに伸ぶるを求むるは、聖賢は為さず。吾が道必ず大いに行はるるの日にして然る後に見るとせば、便ち是れ關を抱き柝を擊つも、自ら枉ぐ可からざるの道有り。松柏は生まれ來たりて便ち直く、士君子は窮居して便ち正し。若し下位に在り難事に遇はば姑く光を韜み恥を忍び、以て他日貴達の時を圖り、然る後に躬を直くして道を行はんと曰はば、此れ但だ出處の兩截の人と為るのみならず、即ち既に仕へての後も、又た兩截の人と為らん。
-
『呻吟語』内篇・修身・千日の積は一日の累に禁へず德は積むに難きを怕れず、只だ累ね易きを怕る。千日の積は一日の累に禁へず。是の故に君子は累ぬる所以の者を防ぐ。