慎思録 / 朱子学
慎思録(朱子学)の名句を、現代語訳と実践の解説つきで。全732句。
貝原益軒の最晩年の書で、益軒が漢文で書いた学問の語録です。自叙は正徳四年(一七一四)、益軒が八十五歳で世を去る年の春に書かれました。書名は『中庸』の「博く学び、審らかに問ひ、慎んで思ひ、明らかに弁じ、篤く行ふ」の「慎思」から取られています。自叙によれば、益軒は十四、五歳から経書を読み続け、本を読んで疑問が生じるたびに黙って考え、分かるまでやめず、腑に落ちたことがあれば書き付けてきました。それを年を重ねてまとめたのがこの六巻です。巻一は「人生まれて学ばざれば、生まれざると同じ。学んで道を知らざれば、学ばざると同じ。知って行ふ能はざれば、知らざると同じ」から始まります。学問と思索の工夫、心の治め方、読書の仕方、人の見分け方、家と国の治め方、古人や先儒への評、さらに神仏や祟りの俗信への疑いまでを、一条ずつ短く書き留めています。朱子学を奉じながらも、晩年には朱子の説への疑いを『大疑録』にまとめた益軒の、自分の頭で確かめようとする姿勢がよく表れた書です。和文の教訓書である益軒十訓と対になる、益軒の学問の本音の書といえます。底本は『日本倫理彙編』巻之八・朱子学派の部(井上哲次郎・蟹江義丸編、育成会、一九〇二)です。国立国会図書館の全文テキストを起こし、返り点と送り仮名の残りを除いて、漢文の本文だけを収めました。読み誤りは、漢文と書き下しを交互に置く東亜堂本(一九一一、巻一〜三と自叙)と、目黒書店『皇国漢文選』の抄録(一九三六)と突き合わせて直しました。巻四〜六は照らし合わせる版がほとんど無く、文脈と引用元の古典によって直しています。師導では自叙と六巻を七百三十二の章句に収め、本文十万七千六百八十四字の百パーセントを覆いました。学派は「朱子学」に置いています。