慎思録 / 巻之一
水靜則淸明燭鬚眉。其平中准。大匠取法焉。人心靜而後能慮。慮而後能得。葢能慮者。明之所生也。能得者。即知得也。故非靜則不能生明。
新字:水静則清明燭鬚眉。其平中准。大匠取法焉。人心静而後能慮。慮而後能得。葢能慮者。明之所生也。能得者。即知得也。故非静則不能生明。
書き下し
水静かなれば則ち清明にして鬚眉を燭らす。其の平らかなること准に中る。大匠法を取る。人心静かにして而る後に能く慮る。慮りて而る後に能く得。蓋し能く慮るとは、明の生ずる所なり。能く得るとは、即ち知り得るなり。故に静かなるに非ざれば則ち明を生ずること能はず。
現代語訳
水が静かであれば澄みきって、ひげや眉まで映し出します。その平らかさは水準器にかなうほどで、腕の良い大工はそれを手本にします。人の心も静まって初めてよく思慮でき、思慮して初めてよく得ることができます。よく思慮できるとは、明らかさが生まれるところです。よく得るとは、知り得ることです。だから静かでなければ明らかさは生まれません。
解説
静かな心が明らかな知を生むことを、水にたとえて説いた条です。前半の水のたとえは『荘子』天道篇の言葉で、後半の「静かにして后に能く慮り、慮りて后に能く得」は『大学』経一章に基づきます。益軒は道家と儒家の言葉を重ね合わせ、心を静めることが判断の前提だと示しています。慌ただしく情報に追われていると、考えているつもりでも心が波立っていて、物事がよく映りません。大事な判断の前に一呼吸おいて心を静めることの意味を教えてくれます。
この章句が説くこと
静明慮大学心
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