慎思録 / 巻之一
人氣須是剛。不剛則不能擔當義理。又須是柔。不柔則不能和順義理。勿以剛暴其氣。勿以柔從俗流。須剛柔並行不相悖。學者養氣之道。須以不剛不柔爲節度。是學者之要務也。剛者非强暴之謂。不屈于欲也。仁以爲己任。死而後已者。剛也。柔者非軟弱之謂。溫和謹厚能忍者。柔也。
新字:人気須是剛。不剛則不能担当義理。又須是柔。不柔則不能和順義理。勿以剛暴其気。勿以柔従俗流。須剛柔並行不相悖。学者養気之道。須以不剛不柔為節度。是学者之要務也。剛者非強暴之謂。不屈于欲也。仁以為己任。死而後已者。剛也。柔者非軟弱之謂。温和謹厚能忍者。柔也。
書き下し
人の気は須らく是れ剛なるべし。剛ならざれば則ち義理を担当すること能はず。又須らく是れ柔なるべし。柔ならざれば則ち義理に和順すること能はず。剛を以て其の気を暴ふこと勿かれ。柔を以て俗流に従ふこと勿かれ。須らく剛柔並び行はれて相悖らざるべし。学者の気を養ふの道は、須らく剛ならず柔ならざるを以て節度と為すべし。是れ学者の要務なり。剛とは強暴の謂に非ず。欲に屈せざるなり。仁以て己が任と為し、死して後已む者は、剛なり。柔とは軟弱の謂に非ず。温和謹厚にして能く忍ぶ者は、柔なり。
現代語訳
人の気は剛くなければなりません。剛くなければ義理を担うことができません。また柔らかくなければなりません。柔らかくなければ義理に和やかに従うことができません。剛さによって気を荒立ててはいけません。柔らかさによって世俗の流れに従ってはいけません。剛と柔を並べて行い、互いにぶつからないようにすべきです。学ぶ者が気を養う道は、剛すぎず柔すぎないことを節度とすべきで、これが学ぶ者の大切な務めです。剛とは乱暴で強いことを言うのではありません。欲に屈しないことです。仁を自分の任務とし、死ぬまでやめない者が剛です。柔とは軟弱を言うのではありません。温和で慎み深く、よく耐え忍ぶ者が柔です。
解説
剛と柔を対立させず、両方を備えることを養気の節度とした条です。「仁以て己が任と為し、死して後已む」は『論語』泰伯篇の曾子の言葉で、益軒はこれを剛の手本にしています。剛を強暴から、柔を軟弱から切り離して定義し直しているのが要点で、剛は欲に負けない芯の強さ、柔は温和に耐える力だと言います。職場でも、押しの強さと物腰の柔らかさは両立できます。言うべきことは曲げず、言い方は穏やかにする、その釣り合いを考えさせる一条です。
この章句が説くこと
気剛柔仁養気
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