慎思録 / 巻之二
記事者。必提其要。纂言者。必鉤其玄。凡學者讀書之法。當如此。然其記事纂言者。不採嘉言善行。有益于世敎者。而好載猥紬駁雜奇怪妄誕之說。不足以爲益。適足以惑人。
新字:記事者。必提其要。纂言者。必鉤其玄。凡学者読書之法。当如此。然其記事纂言者。不採嘉言善行。有益于世教者。而好載猥紬駁雑奇怪妄誕之説。不足以為益。適足以惑人。
書き下し
事を記す者は必ず其の要を提げ、言を纂むる者は必ず其の玄を鉤る。凡そ学者の読書の法、当に此くの如くすべし。然るに其の事を記し言を纂むる者、嘉言善行の世教に益有る者を採らずして、好んで猥紬駁雑奇怪妄誕の説を載す。以て益と為すに足らず、適に以て人を惑はすに足る。
現代語訳
事実を記録する者は必ずその要点を掲げ、言葉を編集する者は必ずその奥深い所を引き出します。およそ学ぶ者の読書の方法も、このようであるべきです。ところが事を記し言葉を集める者の中には、世の教化に益のある立派な言葉や善い行いを採らずに、好んで卑俗で雑多な、奇怪で根拠のない説を載せる者がいます。それは益にはならず、かえって人を惑わすばかりです。
解説
冒頭は韓愈「進学解」の「事を記す者は必ず其の要を提げ、言を纂むる者は必ず其の玄を鉤る」です。益軒はこれを読書と編纂の心得とし、世に益のある嘉言善行を選べ、と説きます。益軒自身、『大和本草』や多くの教訓書を編んだ編集者でもあり、何を採り何を捨てるかに強い考えを持っていました。情報があふれる今、要点をつかむ読み方と、人を惑わす話を広めない発信の責任は、ますます大切になっています。
この章句が説くこと
読書要点編纂世教嘉言
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