慎思録 / 巻之一
凡居家立朝。獨處接人。皆當隨處逐件。點檢其言行。須自省察其所言所行之善惡。而愼其獨。不可一事自欺而放過。必如此。而行修言道之功可進。
新字:凡居家立朝。独処接人。皆当随処逐件。点検其言行。須自省察其所言所行之善悪。而慎其独。不可一事自欺而放過。必如此。而行修言道之功可進。
書き下し
凡そ家に居り朝に立ち、独り処り人に接するに、皆当に処に随ひ件を逐ひて、其の言行を点検すべし。須らく自ら其の言ふ所行ふ所の善悪を省察して、其の独りを慎むべし。一事も自ら欺きて放過すべからず。必ず此くの如くして、行ひ修まり言道ふの功進むべし。
現代語訳
およそ家にいる時も、朝廷に出仕する時も、独りでいる時も、人に接する時も、どこにいても一件ごとに、自分の言葉と行いを点検すべきです。自分の言ったこと行ったことの善悪を自ら省みて察し、独りの時を慎まなければなりません。一つの事でも、自分を欺いて見逃してはいけません。必ずこのようにして初めて、行いが修まり言葉が道にかなう成果が進むのです。
解説
場所を問わず、一つ一つの言行を点検せよと説いた短い条です。前の条で見た省察と慎独を、日常の具体的な場面に広げたもので、家、職場、独りの時間、人付き合いのすべてを挙げています。「行ひ修まり言道ふ」は『礼記』曲礼篇の「行ひ修まり言道ふは、礼の質なり」に基づきます。一件ごとに振り返るのは手間ですが、小さな自己欺瞞を見逃さないことが、大きな過ちを防ぎます。一日の終わりに、その日の言動を一つ思い返す習慣から始めてみたくなります。
この章句が説くこと
省察慎独言行点検自欺
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