慎思録 / 巻之二
淸心省事。豈啻衰年靜居之所宜乎。雖居官者。亦當如是。葢收繁歸約。而不妄生事端則事少心淸。而其樂無窮。此所以養氣修德。而寡過遠禍也。
新字:清心省事。豈啻衰年静居之所宜乎。雖居官者。亦当如是。葢収繁帰約。而不妄生事端則事少心清。而其楽無窮。此所以養気修徳。而寡過遠禍也。
書き下し
心を清くし事を省くは、豈に啻に衰年静居の宜しき所のみならんや。官に居る者と雖も、亦た当に是くの如くすべし。蓋し繁を収めて約に帰し、妄りに事端を生ぜざれば、則ち事少なく心清くして、其の楽しみ窮まり無し。此れ気を養ひ徳を修めて、過ちを寡くし禍を遠ざくる所以なり。
現代語訳
心を清らかにし、事を減らすことは、老年に静かに暮らす人にだけふさわしいことでしょうか。官職にある者であっても、同じようにすべきです。思うに、繁雑なものをまとめて簡約に帰し、みだりに事の発端を生まなければ、事は少なく心は清らかで、その楽しみは尽きません。これが気を養い徳を修め、過ちを少なくし禍を遠ざけるわけです。
解説
「清心省事」は隠居の心得と思われがちですが、忙しい公務の人にこそ必要だ、と益軒は言います。前の条にも見える「専一」「簡」を重んじる考えの延長で、事を増やさないことが心の清さと楽しみを生むと見ます。現代の職場でも、会議や報告、新しい施策を足すことは簡単ですが、減らすことは難しいものです。仕事を増やしているのは自分ではないか、と振り返り、本当に要るものに絞る勇気を促す一条です。
この章句が説くこと
清心省事簡約養気禍
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