慎思録 / 巻之一
天地施恩于萬物。而不望其報。父母施恩于子孫。而不望其報。葢天地父母。本無意于求報。其恩所以廣大而無窮也。今施纎芥之恩於人。而人不報。則爲忿懟。是誠可謂薄夫也。
新字:天地施恩于万物。而不望其報。父母施恩于子孫。而不望其報。葢天地父母。本無意于求報。其恩所以広大而無窮也。今施繊芥之恩於人。而人不報。則為忿懟。是誠可謂薄夫也。
書き下し
天地は恩を万物に施して、其の報いを望まず。父母は恩を子孫に施して、其の報いを望まず。蓋し天地父母は、本報いを求むるに意無し。其の恩の広大にして窮まり無き所以なり。今繊芥の恩を人に施して、人報いざれば、則ち忿懟を為す。是れ誠に薄夫と謂ふべきなり。
現代語訳
天地は万物に恩を施しても、その報いを望みません。父母は子や孫に恩を施しても、その報いを望みません。天地や父母には、もともと報いを求める気持ちがないのです。それがその恩が広大で窮まりない理由です。今、ほんのわずかな恩を人に施して、人が報いなければ怒り恨む。これはまことに薄情な人と言うべきです。
解説
見返りを求めない恩を、天地と父母に学べと説いた短い条です。前に出た天地に事えるという思想と響き合い、人は天地と父母から限りない恩を受けながら、その報いを求められていないことを思い起こさせます。だからこそ、小さな親切に見返りを求めて腹を立てるのは薄情だというのです。人に何かをしてあげて、感謝されないと不満に思うことは誰にでもあります。見返りを期待しない施しのほうが、自分の心も軽く保てるという、日常に生きる教えです。
この章句が説くこと
恩天地父母報い仁
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