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慎思録 / 巻之一

天之授人。以才學與貨財。豈惟厚其人而已哉。誠欲以令補衆人之不足者也。然則有才學者。可敎人而不倦。多貨財者。可施人而救恤。是畏天命而順事之之道也。不然。則侮背天之命也。可不畏乎哉。

新字:天之授人。以才学与貨財。豈惟厚其人而已哉。誠欲以令補衆人之不足者也。然則有才学者。可教人而不倦。多貨財者。可施人而救恤。是畏天命而順事之之道也。不然。則侮背天之命也。可不畏乎哉。

書き下し

天の人に授くるに、才学と貨財とを以てするは、豈に惟其の人を厚くするのみならんや。誠に以て衆人の足らざる者を補はしめんと欲するなり。然らば則ち才学有る者は、人を教へて倦まざるべし。貨財多き者は、人に施して救恤すべし。是れ天命を畏れて之に順ひ事ふるの道なり。然らざれば、則ち天の命を侮り背くなり。畏れざるべけんや。

現代語訳

天が人に才能と学問、財産を授けるのは、その人を豊かにするためだけでしょうか。まことに、それで多くの人の足りないところを補わせようとしているのです。そうであれば、才能と学問のある者は、人を教えて倦まないようにすべきです。財産の多い者は、人に施して救うべきです。これが天命を畏れて、それに従って仕える道です。そうしなければ、天の命を侮り背くことになります。畏れずにいられましょうか。

解説

才能や財産を、天から預かったものとして人のために用いよと説いた条です。前に出た天地に事えるという思想の具体的な形で、才は教えることに、財は施すことに使うのが天命に従うことだと言います。「天命を畏る」は『論語』季氏篇で君子の三畏の第一に挙げられるものです。益軒自身、晩年まで多くの教訓書を平易な和文で書き、学問を広く人々に開きました。自分の持つ知識や技能を後輩や地域のために役立てることは、今の言葉でいう社会への還元に当たります。

この章句が説くこと

天命才学教育施し

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