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慎思録 / 巻之二

天地造化之道。陰陽變化之理有常。是以進退消長存亡之數有限。人物之生其間也。不能逃其定數。是以盛者不能不衰。生者不能不死。此天地之常理也。君子安其常理。故雖傾覆流離不憂苦。雖至衰老。而不嗟嘆。雖臨死亡。而不悲哀。樂夫天命。而不疑者也。

新字:天地造化之道。陰陽変化之理有常。是以進退消長存亡之数有限。人物之生其間也。不能逃其定数。是以盛者不能不衰。生者不能不死。此天地之常理也。君子安其常理。故雖傾覆流離不憂苦。雖至衰老。而不嗟嘆。雖臨死亡。而不悲哀。楽夫天命。而不疑者也。

書き下し

天地造化の道、陰陽変化の理に常有り。是を以て進退消長存亡の数に限り有り。人物の其の間に生ずるや、其の定数を逃るること能はず。是を以て盛んなる者は衰へざること能はず、生ずる者は死せざること能はず。此れ天地の常理なり。君子は其の常理に安んず。故に傾覆流離すと雖も憂苦せず。衰老に至ると雖も嗟嘆せず。死亡に臨むと雖も悲哀せず。夫の天命を楽しみて疑はざる者なり。

現代語訳

天地が万物を生み育てる道、陰陽が変化する理には一定の常があります。だから進むこと退くこと、伸びること縮むこと、存すること亡びることには、限られた数があります。人や物がその間に生まれる以上、その定まった数から逃れることはできません。だから盛んなものは衰えずにはいられず、生まれたものは死なずにはいられません。これが天地の常の理です。君子はその常の理に安んじます。だから家が傾きさすらう身になっても憂い苦しまず、老い衰えても嘆かず、死に臨んでも悲しみません。天命を楽しんで疑わない人なのです。

解説

盛衰や生死を天地の常の理として受け入れれば、逆境にも老いにも動じない、という達観を述べた条です。末尾は『易経』繋辞上伝の「天を楽しみ命を知る、故に憂へず」や、陶淵明「帰去来辞」の「夫の天命を楽しみて復た奚をか疑はん」を思わせます。晩年の益軒自身の心境でもあったでしょう。失敗や衰えを個人の不運とだけ見ず、世の常として受け止めることで、落ち着いて次の一手を考えられる、という心の構えを教えてくれます。

この章句が説くこと

天命常理陰陽老い安心

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