慎思録 / 巻之一
人心不和平。則百般病痛自此起矣。學者應事接物。皆須要胸裏和平。和平則忿厲粗暴之氣自然消除。便是無暴其氣之事。養氣之工夫也。
新字:人心不和平。則百般病痛自此起矣。学者応事接物。皆須要胸裏和平。和平則忿厲粗暴之気自然消除。便是無暴其気之事。養気之工夫也。
書き下し
人心和平ならざれば、則ち百般の病痛此れより起こる。学者事に応じ物に接するに、皆須らく胸裏の和平を要すべし。和平なれば則ち忿厲粗暴の気、自然に消除す。便ち是れ其の気を暴ふこと無きの事にして、気を養ふの工夫なり。
現代語訳
人の心が和やかで平らかでなければ、あらゆる病や悩みはここから起こります。学ぶ者は物事に応じ人や物に接するとき、いつも胸の内が和やかで平らかであることが必要です。和やかで平らかならば、怒りや荒々しい気は自然に消えていきます。それがすなわち気を荒立てないことであり、気を養う工夫です。
解説
心の和平を、あらゆる不調の根に置いた短い条です。「病痛」は身体の病と心の悩みの両方を指し、晩年に『養生訓』を著す益軒らしく、心の持ち方と健康を一つのこととして見ています。『孟子』の「其の気を暴ふこと無かれ」を、怒りを抑え込むことではなく、胸の内を和らげておけば荒い気が自然に消える、という具体的な工夫に読み替えているのが特徴です。苛立ちを我慢で押さえるより、先に心を整えるほうが長続きすると教えてくれます。
この章句が説くこと
和平気心養気養生
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