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慎思録 / 巻之一

常人之議事。多是偏於一理。主於一利。故所思不能周悉。往往偏僻蔽固。自以爲是。是以所見所行。中理者寡矣。是猶不見四方。而唯知於一隅也。

新字:常人之議事。多是偏於一理。主於一利。故所思不能周悉。往往偏僻蔽固。自以為是。是以所見所行。中理者寡矣。是猶不見四方。而唯知於一隅也。

書き下し

常人の事を議するは、多く是れ一理に偏り、一利を主とす。故に思ふ所周悉すること能はず、往往偏僻蔽固にして、自ら以て是と為す。是を以て見る所行ふ所、理に中る者寡し。是れ猶ほ四方を見ずして、唯一隅を知るがごときなり。

現代語訳

普通の人が物事を論じるときは、多くは一つの理屈に偏り、一つの利益を主とします。だから考えが行き届かず、しばしば偏って頑なになり、自分では正しいと思っています。そのため、見ることも行うことも、道理に当たることが少ないのです。これはちょうど、四方を見ずに、ただ一つの隅だけを知っているようなものです。

解説

議論が偏る原因を、一つの理屈と一つの利益への固執に見た短い条です。一理に偏るとは、ある筋の通った考えだけで全体を判断すること、一利を主とするとは、特定の損得だけを軸に考えることです。どちらも部分的には正しいため、本人は自分が正しいと思い込みやすいのが厄介なところです。『論語』述而篇の「一隅を挙ぐ」という言葉を思わせる結びも印象的です。会議で一つの論点に議論が集中したとき、ほかの見方はないかと問い直す習慣を持ちたいものです。

この章句が説くこと

偏見議論視野

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