慎思録 / 巻之一
力行。以厚人倫爲道。是天理民彝之大節。爲日用當務之急。爲學之功。須專一乎此。文學其餘事也。不可爲先務。然有餘力。則文學亦可勉勵。不可怠廢。葢學文者。所以明力行之道也。
新字:力行。以厚人倫為道。是天理民彝之大節。為日用当務之急。為学之功。須専一乎此。文学其余事也。不可為先務。然有余力。則文学亦可勉励。不可怠廃。葢学文者。所以明力行之道也。
書き下し
力行は、人倫を厚くするを以て道と為す。是れ天理民彝の大節にして、日用当務の急為り。学を為すの功は、須らく此に専一なるべし。文学は其の余事なり。先務と為すべからず。然れども余力有れば、則ち文学も亦勉励すべく、怠廃すべからず。蓋し文を学ぶ者は、力行の道を明らかにする所以なればなり。
現代語訳
力を尽くして行うことは、人倫を厚くすることを道とします。これは天の道理と人の常道の大切な節目であり、日々の最も急ぐべき務めです。学問の努力は、これに専念すべきです。学問文章はその余りの事で、先の務めにしてはいけません。しかし余力があれば、学問文章にも励むべきで、怠ってやめてはいけません。書物を学ぶことは、力を尽くして行う道を明らかにするためのものだからです。
解説
前条に続き、実践と書物の学びの関係を整理した条です。「民彝」は『尚書』に見える語で、人が常に守るべき道を指します。益軒は文学を余事としながらも、捨ててよいとは言わず、実践の道を明らかにするために学べと釘を刺しています。実践だけでは独りよがりになり、書物だけでは空論になるという、両方への目配りがあります。仕事でも、現場の経験を本や先人の知恵で照らし直すと、自分のやり方の意味がはっきりします。
この章句が説くこと
力行人倫文学道学問
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