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慎思録 / 巻之二

人有善行。然而自矜自衒。是爲名之事。雖勞苦之甚。有許多之功。苟非出乎誠心。則爲虛僞。所謂不誠無物也。可惜哉。雖與自爲不善者不同。然其不誠則一也。然則是不足爲上而已矣。

新字:人有善行。然而自矜自衒。是為名之事。雖労苦之甚。有許多之功。苟非出乎誠心。則為虚偽。所謂不誠無物也。可惜哉。雖与自為不善者不同。然其不誠則一也。然則是不足為上而已矣。

書き下し

人に善行有り。然れども自ら矜り自ら衒ふは、是れ名の為にする事なり。労苦の甚だしく、許多の功有りと雖も、苟も誠心に出づるに非ざれば、則ち虚偽と為る。所謂誠ならざれば物無きなり。惜しむべきかな。自ら不善を為す者と同じからずと雖も、然れども其の誠ならざるは則ち一なり。然らば則ち是れ上と為すに足らざるのみ。

現代語訳

人に善い行いがあっても、自ら誇りひけらかすなら、それは名誉のためにする事です。たいへん苦労し、多くの功績があっても、もし誠の心から出たものでなければ、偽りとなります。いわゆる「誠でなければ物はない」ということです。惜しいことです。自ら不善を行う者とは同じでないにしても、誠でないという点では一つです。そうであれば、これは上等とするには足りません。

解説

善行も名声のためなら偽りになる、と説く条です。「誠ならざれば物無し」は『中庸』第二十五章の言葉で、誠がなければ何事も成り立たないという意味です。二・六の「自ら衒ひ自ら矜る」の戒めを、動機の誠の問題として掘り下げています。社会貢献や善意の行動がアピールの手段になりやすい今、人に見せるためか、本当にそう思うからか、という問いは避けて通れません。結果が同じでも動機が違えば価値が違う、という厳しい見方です。

この章句が説くこと

善行偽り自矜

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