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慎思録 / 巻之二

財者。國家之所資用。而民命之所繫也。故財竭則自給不足。况贍貧窮。行禮義。勵廉耻。賞有功。行兵防敵。凡國家百事。不可得擧行乎。故治國家之道。以理財爲要。然足財之道。在乎務本而節用。務本者。在敎稼穡。勸種植。惜民力。賑貧乏而已。非貪求侵奪之謂也。節用者。在量入爲出。裁制冗費。禁止奢華而已。非吝嗇刻薄之謂也。大學之書。生財有大道之一節。是理財之大畧也。如小人之貪求侵奪。與吝嗇刻薄。是生財之小道也。

新字:財者。国家之所資用。而民命之所繋也。故財竭則自給不足。況贍貧窮。行礼義。励廉耻。賞有功。行兵防敵。凡国家百事。不可得挙行乎。故治国家之道。以理財為要。然足財之道。在乎務本而節用。務本者。在教稼穡。勧種植。惜民力。賑貧乏而已。非貪求侵奪之謂也。節用者。在量入為出。裁制冗費。禁止奢華而已。非吝嗇刻薄之謂也。大学之書。生財有大道之一節。是理財之大略也。如小人之貪求侵奪。与吝嗇刻薄。是生財之小道也。

書き下し

財は国家の資用する所にして、民命の繋かる所なり。故に財竭くれば則ち自ら給するに足らず。況んや貧窮を贍し、礼義を行ひ、廉恥を励まし、有功を賞し、兵を行ひ敵を防ぐをや。凡そ国家の百事、挙行するを得べからざらんや。故に国家を治むるの道は、理財を以て要と為す。然れども財を足すの道は、本を務めて用を節するに在り。本を務むとは、稼穡を教へ、種植を勧め、民力を惜しみ、貧乏を賑はすに在るのみ。貪求侵奪の謂ひに非ざるなり。用を節すとは、入るを量りて出づるを為し、冗費を裁制し、奢華を禁止するに在るのみ。吝嗇刻薄の謂ひに非ざるなり。大学の書の、財を生ずるに大道有りの一節は、是れ理財の大略なり。小人の貪求侵奪と吝嗇刻薄との如きは、是れ財を生ずるの小道なり。

現代語訳

財は国家が用いるもとであり、民の命がかかっているものです。だから財が尽きれば、自分を支えることさえできません。まして貧しい者を救い、礼義を行い、廉恥を励まし、功ある者を賞し、兵を動かし敵を防ぐことなど、およそ国家のあらゆる事が行えなくなるではありませんか。だから国家を治める道は、財を整えることを要とします。しかし財を足らせる道は、本業を務めて費用を節約することにあります。本業を務めるとは、農耕を教え、植え付けを勧め、民の力を惜しみ、貧しい者に施すことにほかならず、むさぼり求めて奪い取ることではありません。費用を節約するとは、入るものを量って出すものを決め、無駄な費用を削り、贅沢を禁じることにほかならず、けちで冷酷であることではありません。『大学』の「財を生ずるに大道有り」の一節が、理財のあらましです。小人がむさぼり奪い取ることや、けちで冷酷であることは、財を生む小さな道にすぎません。

解説

財政を国の要とし、その正しいやり方を「本を務め用を節す」とまとめた条です。「入るを量りて出づるを為す」は『礼記』王制篇、「財を生ずるに大道有り」は『大学』伝十章の言葉で、生む者を多く、食む者を少なくする、という一節です。益軒が、節約とけち、増収と収奪をはっきり区別している点が大切です。会社の経営でも、コスト削減が現場を痩せさせ、売上の追求が取引先や顧客を傷つけることがあります。財を整える目的と手段の筋を問い直させる一条です。

この章句が説くこと

理財節用務本政治大学

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