慎思録 / 巻之二
衆人之愛惡。出于私情之偏僻。而違理者多矣。世有謹厚淳實之人。復不免有斯偏僻之病者。何也。葢因其心智昏昧有所蔽惑也。愛惡於人者。所當自省察也。
新字:衆人之愛悪。出于私情之偏僻。而違理者多矣。世有謹厚淳実之人。復不免有斯偏僻之病者。何也。葢因其心智昏昧有所蔽惑也。愛悪於人者。所当自省察也。
書き下し
衆人の愛悪は、私情の偏僻に出でて、理に違ふ者多し。世に謹厚淳実の人有るも、復た斯の偏僻の病有ることを免れざる者は、何ぞや。蓋し其の心智昏昧にして蔽惑する所有るに因るなり。人を愛悪する者は、当に自ら省察すべき所なり。
現代語訳
多くの人の好き嫌いは、私情の偏りから出ていて、理に背くものが多くあります。世の中には慎み深く誠実な人もいますが、それでもこの偏りの病を免れない者がいるのはなぜでしょうか。思うに、その心の知恵が暗く、覆われ惑わされる所があるからです。人を好いたり嫌ったりするときには、自ら省みるべきです。
解説
人の好き嫌いは私情に偏りやすく、善良な人でもこの病を免れない、という条です。『大学』伝八章の「好みて其の悪を知り、悪みて其の美を知る者は、天下に鮮なし」と同じ趣旨で、性格の善さだけでは判断の偏りは防げず、知の明らかさが要る、という指摘が朱子学らしいところです。職場で人を評価するとき、好感を持つ相手を甘く、苦手な相手を厳しく見ていないか。人柄が良い上司でも陥りやすい落とし穴を自覚させる一条です。
この章句が説くこと
愛悪偏見省察知私情
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