導
師導
古典を学びたいすべての人に
師導
› 孫子
孫子 / 兵家
孫子の章句一覧
孫子(兵家)の名句を、現代語訳と実践の解説つきで。全129句。
九地篇
孫子曰:凡用兵之法,必以九地為常。
兵を用いる法は九種類の地形を常に考慮することにある。
一曰散地,二曰輕地,三曰爭地,四曰交地,五曰衢地,六曰重地,七曰圮地,八曰圍地,九曰死地。
九種類の地形を列挙している。
諸侯自戰其地者,散地也。
自国の地で戦えば散地である。
入人之地而不深者,輕地也。
敵地に入って浅い場所は軽地である。
彼此得交者,交地也。
互いに往来できる場所は交地である。
三軍爭利之地,爭地也。
三軍が利益を争う地は争地である。
行衢道者,衢地也。
交差点となる道は衢地である。
入人之地深,背城邑多者,重地也。
敵地に深く入り込み城邑を背にするのは重地である。
山林險阻,沮澤凡難行之道,圮地也。
山林や湿地など難行の道は圮地である。
四面受敵者,圍地也。
四方を敵に囲まれる状況を囲地と呼ぶ。
疾戰則存,不疾戰則亡者,死地也。
即座に戦わなければ滅ぶ地は死地である。
是故善用兵者,必由之道,可以無敗;處之地,可以無窮。
兵を善く用いる者は常に打開策を見出す。
九変篇
孫子曰:凡用兵之法,將受命於君,合軍聚眾…圮地無舍,衢地交合,絕地無留,圍地則謀,死地則戰。
地形ごとの対応法を説く。
將之道,曰:靜以幽,正以治。
将の道は静かで奥深く、正しく秩序立っていること。
能愚士卒之耳目,使之無知;易其事,革其謀,使人無識。
兵士を混乱させて情報を悟られないようにする。
移營,迂進,佯北,皆所以惑敵也。
陣営の移動や退却の演技は敵を惑わすため。
是故智者之慮,必雜於利害。
賢者の考慮は利と害の両面を兼ね備える。
見利而進,不見利而止。
利益があれば進み、なければ止まる。
怒而撓之,可使愚士卒之耳目。
怒りで敵を混乱させられる。
作戦篇
孫子曰:凡用兵之法,馳車千駟,革車千乘,帶甲十萬,千里饋糧,則內外之費,賓客之用,膠漆之材,車甲之奉,日費千金,然後十萬
大軍を動かすには莫大な費用がかかる。
其用戰也勝,久則鈍兵挫銳,攻城則力屈,久暴師則國用不足。
戦争が長引けば兵は疲弊し、国力も尽きる。
故兵聞拙速,未睹巧之久也。
拙くとも速い戦はあるが、巧みに長引く戦はない。
夫兵久而國利者,未之有也。
戦争が長引いて国に利益をもたらした例はない。
不盡知用兵之害者,則不能盡知用兵之利也。
戦争の害を知らなければ、利もわからない。
善用兵者,役不再籍,糧不三載,取用於國,因糧於敵,故軍食可足也。
戦上手は徴兵や兵糧を繰り返さず、敵から奪って軍を養う。
國之貧於師者遠輸,遠輸則百姓貧。
遠距離輸送は人民を貧しくする。
近師者貴賣,貴賣則百姓竭。
軍の近くでは物価が高騰し、民は疲弊する。
財竭於上,力竭於下,百姓之財百姓之力竭矣,則內外之財皆盡矣。
財力も人民の力も枯渇する。
然後乃勵將軍,勵將軍則竭士卒,竭士卒則空虛矣。
将を励ましても兵士は疲弊し、軍は空虚となる。
故明君賢將,所以動衆,移軍,立國之利也。
明君と賢将は国家に利益をもたらすよう軍を動かす。
故國盡上下一心,則百姓與之偕死,不可得而敗矣。
上下が一致すれば民も一丸となって敗れない。
勢篇
孫子曰:善戰者,致人而不致於人。
戦上手は敵を自分の意のままに動かし、自分は敵に動かされない。
能使敵人自至者,利之也;能使敵人不得至者,害之也。
敵を自ら来させるのは利を与えるからであり、来させないのは害を与えるからである。
故善戰者,求之於勢,不責於人。
戦上手は勝利を勢いに求め、人の力量に頼らない。
故能擇人而任勢,故無敗於敵。
適切な人を選び、勢に任せれば敗北しない。
故善戰者之勢,如轉圓石於千仞之山者,勢也。
戦上手の勢いは、丸石を高山から転がすようなものだ。
地形篇
孫子曰:地形者,兵之所因也。凡知地形者勝。
地形は戦争の基本条件であり、地形を知らなければ勝てない。
地形有高下、遠近、險易、廣狹、死生,皆關於勝負。
地形の要素が勝敗に直接影響することを列挙している。
地形分為通地、掛輿地、支峽地、逢生地、死地,每有所用。
伝統的に地形を分類し、場所に応じた戦術があると説く。
通地者,兵行而無阻,故可速進也。
通地は行軍が容易で迅速に移動できる地形である。
掛輿地者,無所停駐,故不可鬥也。
掛輿地は停滞が困難で戦闘に不利な地形である。
支峽地者,易為斷,故不可獨行也。
支峽地は分断されやすく単独で進むと危険である。
逢生地者,近於賓地,易為救,故可戰也。
逢生地は援軍や補給が受けやすく戦闘に向く場所である。
死地者,出入無路,無所恃,然後戰必死也。
死地は退路がなく、兵は死地に陥ると死を免れないとする最悪の地形。
故將之道,察地之易而審其利害,而後行之。
将は地形の易難を見極め利害を判断してから行動すべきである。
善用地者,以地為利,不以地為害,因地制宜。
地形の利点を活用し、欠点を補うことで最適化するのが賢者のやり方である。
地利者,能使眾散而不失其實者也。
地利は兵をばらしても実を失わない有利な配置を指す。
故凡察地者,先察五路之利害,而後定軍用。
地形を察する際は複数ルートの利害を検討してから行動を決定せよ。
地形不察,則兵危;地形察明,則兵安。
地形の不把握は危険を招き、把握すれば安全を得られる。
然故良將之所貴者,察地而能行者也。
優れた将は地形を見極めて適切に行動できることを最も重んじる。
始計篇
孫子曰:兵者,國之大事,死生之地,存亡之道,不可不察也。
戦争は国家の最重要事項であり、生死や存亡を左右する。軽視してはならない。
故經之以五事,校之以計,而索其情。
戦を考えるには五つの要素を基準とし、計算によって比較し、実情を把握する。
一曰道,二曰天,三曰地,四曰將,五曰法。
第一に「道」、第二に「天」、第三に「地」、第四に「将」、第五に「法」である。
道者,使民與上同意也,故可以與之死,可以與之生,而民不詭也。
「道」とは、民が支配者と志を同じくすること。共に死に、共に生きても裏切らない状態。
天者,陰陽、寒暑、時制也。
「天」とは自然環境や季節・時間などの条件。
地者,高下、遠近、險易、廣狹、死生也。
「地」とは地形や距離、広さ、地勢の有利不利。
將者,智、信、仁、勇、嚴也。
将とは知恵・信義・仁愛・勇気・厳格さを備えた人物である。
法者,曲制、官道、主用也。
「法」とは組織制度・指揮系統・物資管理を指す。
凡此五者,將知之,必勝乃知之,不知此五者,則不能勝。
五事を理解することが勝敗を分ける。
故校之以計,而索其情,曰:主孰有道?將孰有能?天地孰得?法令孰行?兵衆孰強?士卒孰練?賞罰孰明?
比較して状況を明らかにするための具体的な問い。
吾以此知勝負矣。
これらによって勝敗を予測できる。
將聽吾計,用之必勝,留之;將不聽吾計,用之必敗,去之。
計に従えば勝ち、従わなければ敗北する。
計利以聽,乃為之勢,以佐其外。
計算して有利なら実行し、勢いを作って補強する。
勢者,因利而制權也。
勢いとは利を利用して主導権を握ること。
兵者,詭道也。
戦争とは詭計である。
故能而示之不能,用而示之不用,近而示之遠,遠而示之近。
実際とは逆の情報を与えて欺く。
利而誘之,亂而取之,實而備之,強而避之,怒而撓之,卑而驕之,佚而勞之,親而離之。
敵の状況に応じた対処法を列挙。
攻其無備,出其不意。
備えのないところを攻め、不意を突け。
此兵家之勝,不可先傳也。
勝利の方法は前もって公開できない。
形篇
孫子曰:昔之善戰者,先為不可勝,以待敵之可勝。
昔の戦上手はまず敗けない態勢を作り、敵の隙を待った。
不可勝在己,可勝在敵。
負けないことは自分で作れるが、勝つ機会は敵が作る。
故善戰者,能為不可勝,不能使敵之必可勝。
戦上手は自らを敗北しないようにできるが、敵を必ず敗北させることはできない。
故曰:勝可知,而不可為。
勝利は予測できても、人為的に必ず作れるものではない。
故善戰者,立於不敗之地,而不失敵之敗也。
戦上手は負けない立場を保ち、敵の敗北の機会を逃さない。
是故勝兵先勝而後求戰,敗兵先戰而後求勝。
勝つ軍は勝利を確実にしてから戦うが、敗れる軍は戦ってから勝利を求める。
善用兵者,修道而保法,能為勝敗之政。
戦上手は道と法を整えて勝敗を決する。
能使敵人自至者,利之也;能使敵人不得至者,害之也。
敵を来させるのは利を与えるからであり、来させないのは害を与えるからである。
故敵佚能勞之,飽能飢之,安能動之。
敵が楽なら疲れさせ、満腹なら飢えさせ、安らかなら動かす。
火攻篇
孫子曰:凡火攻有五,一曰火人,二曰火積,三曰火輜,四曰火庫,五曰火隊。
火攻には五種類があり、人を焼く、物資を焼く、輸送を焼く、倉庫を焼く、軍隊を焼く、の五つである
火攻必有因,因必有素,素必有時。
火攻には原因・準備・時機が不可欠である。
火發於內,則早應之於外。
内部で火災が発したら、外部からすぐに対応せよ。
火發而其兵靜者,待而勿攻;極其火力,可從而攻之。
火が起きても敵軍が落ち着いていれば攻撃せず、火が最大になったときに攻撃せよ。
火可發於外,以待其時;發於內,必早應之。
外部から火を放つ場合は時を待ち、内部で発すれば即応する。
火攻有時,天旱風起,火可發也。
火攻の好機は乾燥して風の強い時である。
火發上風,無攻下風;晝風久,夜風止。
火を上風から発し、下風方向に攻めることは避けよ。昼と夜で風の性質が異なる。
凡火攻,必因五火之變,以應五事。
火攻は五つの変化を理解し、五事(道天地将法)と照らして運用せよ。
火可為利,亦可為害。人能因之為利者,乃為勝;不能因之為利者,反為敗。
火攻は利益にもなり災厄にもなる。活用できれば勝ち、失敗すれば敗北する。
故明君賢將,能以上智為間者必勝矣。
火攻篇の結びで、明君賢将は智を活かして間者を用いることで勝利する、と説く。
用間篇
孫子曰:凡興師十萬,出征千里,百姓之費,公家之奉,日費千金,內外騷動,怠於道路,不得操事者七十萬家。
十万の軍を動かすには膨大な費用と混乱が生じる。
故三軍之事,莫親於間,賞莫厚於間,事莫密於間。
軍事において間者ほど重要なものはなく、報酬も厚く、秘密も厳しい。
非聖智不能用間,非仁義不能使間,非微妙不能得間之實。
聖智・仁義・微妙さがなければ間者を用いられない。
必因間知敵之情,而後能成大功。
間者によって敵情を知ることで大功が成る。
用間有五:因間、內間、反間、死間、生間。
間者には五種類ある。
因其鄉人而用之者,因間也。
現地の人を利用するのが因間である。
使其官吏者,內間也。
敵国の官吏を利用するのが内間である。
反間者,因敵間而反用之。
敵のスパイを逆に利用するのが反間である。
死間者,為誑事於外,使吾間知之,而傳於敵間也。
虚偽情報を敵に漏らす者が死間である。
生間者,反報於敵者也。
敵地から帰還して情報を持ち帰るのが生間である。
五間之用,必不可不知也。知之者,必勝;不知者,必敗。
五間の使い方を知らなければ必ず敗北する。
虚実篇
孫子曰:凡先處戰地而待敵者佚,後處戰地而趨戰者勞。
先に戦場を占めれば楽、後から来れば疲れる。
攻其無備,出其不意。
備えのないところを攻め、不意を突け。
行千里而不勞者,行於無人之地也。
千里を進んでも疲れないのは、敵がいないところを通るからである。
爭於所必趨者,則敵先至;爭於所不趨者,則我先至。
敵も向かう場所では後手に回るが、敵が重視しない場所では先手を取れる。
行軍篇
孫子曰:凡行軍者,必先識地形而後行。
行軍する者はまず地形を把握してから進軍すべきである。
善用兵者,作戰于易勝者也。
戦いにたけた者は、勝ちやすい相手・状況で作戦を行う。
故行軍之法,近而示之遠,遠而示之近。
行軍の基本は、敵に位置・意図を誤認させることである。
夫未戰而廟算者,不祥之道也。
戦わないうちから結果を確定的に計る者は災いを招く。
軍無輜重,輜重者疲也。
補給物資が過重だと部隊は疲弊する。
兵行詭道,能為敵之不意也。
行軍・作戦においては奇をてらい、敵の不意を突け。
通於地者勝,不能通者敗。
地理に精通することが勝敗を左右する。
行軍之間,必察人馬之疲勞。
行軍では兵士・馬の疲労管理が成否を分ける。
留師則疑,速師則利。
部隊を停滞させると不利になり、迅速に動かすことに利がある場合がある。
凡出師有五:道、天、地、將、法。用之以備亂。
行軍・出師に際しては始計篇の五事を再確認して備えるべし。
兵以詭道為上,守以固為上。
攻めるときは詭計、守るときは堅固さが重要である。
凡軍分而行,必先令其路,而後行之。
部隊を分割して行動する場合は、事前に通路や連絡を確保せよ。
軍争之法,先得地而後得人。
軍争ではまず有利な地を確保し、それから兵の有利を図るべきである。
凡至軍必察其前後左右之勢而後進。
軍は進む前に周囲の状況を細かく観察せよ。
謀攻篇
孫子曰:凡用兵之法,全國為上,破國次之;全軍為上,破軍次之;全旅為上,破旅次之;全卒為上,破卒次之;全伍為上,破伍次之。
戦争の理想は敵を壊滅させるのではなく、できるだけ完全な形で制圧することだと説く。
是故百戰百勝,非善之善者也;不戰而屈人之兵,善之善者也。
百戦百勝が必ずしも最上の善ではなく、戦わずに敵を屈服させることが最上であると説く。
故上兵伐謀,其次伐交,其次伐兵,其下攻城。
最上の戦い方は敵の謀略を攻めることで、次は同盟関係、その次は軍隊、最下は城攻めである。
攻城之法,為不得已。
城攻めは最終手段である。
修櫓轒轀,具器械,三月而後成,距堙,又三月而後已。
攻城戦の準備には半年もの時間がかかることを示している。
將不勝其忿而蟻附之,殺士卒三分之一,而城不拔者,此攻之災也。
怒りに任せて城攻めをすれば大損害を出し、落とせないのは災厄である。
故善用兵者,屈人之兵而非戰也,拔人之城而非攻也,毀人之國而非久也。
戦わず、攻めず、短期間で相手を制するのが上策である。
故用兵之法,十則圍之,五則攻之,倍則分之,敵則能戰之,少則能逃之,不若則能避之。
兵力差に応じた戦法を説く。
軍争篇
孫子曰:凡用兵之法,將受命於君,合軍聚眾…莫難於軍爭。
軍を動かす中で最も難しいのは軍争(主導権争い)である。
軍爭之難者,以迂為直,以患為利。
遠回りをして近道にし、困難を利益に変える。
故迂其途而誘之以利,後人發,先人至,此知迂直之計者也。
遠回りで敵を誘い、後から出発して先に到着する。
故軍爭為利,軍爭為危。
軍争は利益にも危険にもなる。
古典を、あなたの毎日に活かす。
名句の現代語訳とやさしい解説を、あなたの学びに。師導で古典をはじめましょう。
師導をはじめる