孫子 / 作戦篇
故智將務食於敵。食敵一鍾,當吾二十鍾;萁稈一石,當吾二十石。
新字:故智将務食於敵。食敵一鍾,当吾二十鍾;萁稈一石,当吾二十石。
書き下し
故に智将は敵に食するを務む。敵に食する一鍾は、吾が二十鍾に当たり、萁稈一石は、吾が二十石に当たる。
現代語訳
だから智将は、敵地で食糧を調達することに努める。敵から奪った食糧一鍾は、自国から運ぶ二十鍾に相当し、敵の飼い葉一石は、自国から運ぶ二十石に相当するのだ。
解説
補給の効率を、具体的な数字で説いた一節です。孫子は、遠い自国から兵糧を運ぶコストの大きさ(前段の「千里饋糧」)を踏まえ、賢い将は「敵地で現地調達せよ」と言います。運搬の手間と損耗を考えれば、敵から奪う一を、自前で運ぶ二十に相当すると評価する——徹底したコスト意識です。ビジネスでも、すべてを自前で抱え込むより、現地の資源・パートナー・既存の仕組みを賢く使うほうが、はるかに効率的な場面があります。遠くから重いコストを引きずるのではなく、その場で得られるものを最大限に活かす。「二十分の一の労力で同じ成果」を狙う発想が、消耗戦を避ける知恵です。
この章句が説くこと
現地調達士気疲弊兵站効率コスト意識資源活用
関連する章句
-
孫子・作戦篇兵を善く用うる者は、役に再び籍せず、糧を三たび載せず。国に用を取り、敵に因りて糧をし、故に軍食足るべし。
-
李衛公問対・卷下夫れ用兵の法は、必ず先ず吾が士衆を察し、吾が勝氣を激して、乃ち以て敵を擊つべし。吳起の『四機』は、氣機を以て上と爲す。他の道無きなり。能く人人をして自ら鬬わしむれば、則ち其の銳當たる莫し。
-
三略・上略夫れ軍を統べ勢を持する者は将なり。勝を制し敵を敗る者は衆なり。故に乱将は軍を保たしむべからず、乖衆は人を伐たしむべからず。城を攻むるも抜くべからず、邑を囲むも則ち廃れず。二者功無ければ、則ち士力疲憊す。士力疲憊すれば、則ち将は孤にして衆は悖る。以て守れば則ち固からず、以て戦えば則ち奔北す。是を老兵と謂う。兵老ゆれば、則ち将の威行われず。将に威無ければ、則ち士卒は刑を軽んず。士卒刑を軽んずれば、則ち軍は伍を失う。軍伍を失えば、則ち士卒は逃亡す。士卒逃亡すれば、則ち敵は利に乗ず。敵利に乗ずれば、則ち軍は必ず喪ぶ。
-
六韜・励軍武王 太公に問ひて曰く、「吾 三軍の衆をして、城を攻むれば先登を争ひ、野戦すれば先赴を争ひ、金の声を聞きて怒り、鼓の声を聞きて喜ばしめんと欲す。之を為すこと奈何」と。太公曰く、「将に三あり」と。武王曰く、「敢へて其の目を問はん」と。太公曰く、「将 冬に裘を服ず、夏に扇を操らず、雨に蓋を張らず、名づけて礼将と曰ふ。将 身づから礼を服せざれば、以て士卒の寒暑を知る無し。隘塞を出で、泥塗を犯すには、将 必ず先づ下りて歩む、名づけて力将と曰ふ。将 身づから力を服せざれば、以て士卒の労苦を知る無し。軍 皆な次を定めて、将 乃ち舎に就く。炊ぐ者 皆な熟して、将 乃ち食に就く。軍 火を挙げざれば、将も亦た挙げず、名づけて止欲将と曰ふ。将 身づから止欲を服せざれば、以て士卒の飢飽を知る無し。将 士卒と寒暑・労苦・飢飽を共にす、故に三軍の衆、鼓の声を聞けば則ち喜び、金の声を聞けば則ち怒る。高城深池、矢石 繁く下るも、士は先登を争ふ。白刃 始めて合ふも、士は先赴を争ふ。士は死を好みて傷つくを楽しむに非ざるなり。其の将の寒暑・飢飽を知ること審らかにして、労苦を見ること明らかなるが為なり」と。
-
孫子・行軍篇水を絶てば必ず水に遠ざかる。客水を絶ちて来たらば、之を水内に迎うる勿かれ。半ば済らしめて之を撃つは利なり。戦わんと欲する者は、水に附きて客を迎うる無かれ。生を視て高きに処り、水流を迎うる無かれ。此れ水上に処るの軍なり。
-
『韓非子』難二第三十七簡子抱を投げて曰く、「烏乎、吾の士數弊す。」燭過冑を免ぎて對えて曰く、「亦た君の能わざる有るのみ。士弊れたる者無し。」