孫子 / 始計篇
此兵家之勝,不可先傳也。
新字:此兵家之勝,不可先伝也。
書き下し
此れ兵家の勝なり。先づ伝うべからざるなり。
現代語訳
勝利の方法は前もって公開できない。
解説
謀攻へと続く始計篇の結びで、孫子が兵法の本質を語る一節です。ここまで説いてきた勝利の方法は、状況に応じて変幻自在に用いるものであり、あらかじめ「これが正解だ」と型として固定して伝えることはできない、というのです。マニュアル化できない、その場の判断こそが兵法の生命だと孫子は考えました。仕事でも、優れた戦略や打ち手は、状況・相手・タイミングによって変わり、そのまま他に流用できるとは限りません。過去の成功パターンをそのまま当てはめれば、かえって足をすくわれる。原理原則は学べても、最後は目の前の状況を読んで応用する力が要る。定石を知りつつ、定石に縛られない。臨機応変の重要性を、孫子は始計篇の最後に置きました。
この章句が説くこと
秘密戦略
関連する章句
-
尚書・仲虺之誥弱きを兼(あわ)せ昧(くら)きを攻め、乱るるを取り亡ぶるを侮(あなど)り、亡ぶるを推(お)して存するを固くすれば、邦乃(すなわ)ち其れ昌(さか)んなり。
-
『韓非子』說林上二十二將に之を敗らん欲せば、必ず姑く之を輔けよ。將に之を取らんと欲せば、必ず姑く之に予えよ。
-
孫子・始計篇孫子曰く、兵とは国の大事なり。死生の地、存亡の道、察せざるべからず。
-
孫子・謀攻篇是の故に百戦百勝は、善の善なる者に非ざるなり。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。
-
老子・第42章道は一を生じ、一は二を生じ、二は三を生じ、三は万物を生ず。万物は陰を負いて陽を抱き、沖気以て和を為す。人の悪む所は、唯だ孤・寡・不穀のみ。而るに王公は以て称と為す。故に物は或いは之を損して益し、或いは之を益して損す。人の教うる所は、我も亦た之を教う。強梁なる者は其の死を得ず。吾れ将に以て教えの父と為さんとす。
-
孫子・地形篇孫子曰く、凡そ地形には通なる者、掛なる者、支なる者、隘なる者、険なる者、遠なる者あり。我も以て往くべく、彼も以て来たるべきを、通と曰う。通形には、先ず高陽に居り、糧道を利にして、以て戦えば則ち利あり。