孫子 / 始計篇
勢者,因利而制權也。
新字:勢者,因利而制権也。
書き下し
勢とは利に因りて権を制するなり。
現代語訳
勢いとは利を利用して主導権を握ること。
解説
孫子が「勢」を定義した一節です。「勢」とは、有利な状況(利)を手がかりに、主導権(権)を握ることだ、と説きます。勢いとは、根性や気合いのような精神論ではなく、有利な条件を巧みに利用して、こちらのペースで事を運べる状態を作り出すこと。つまり、力任せではなく、状況を味方につけて優位を築く知恵です。仕事でも、勢いに乗るチームは、たいてい有利な条件(好機、追い風、相手の隙)をうまく捉え、そこから主導権を握っています。偶然の勢いを待つのではなく、有利な要素を見つけて意図的に流れを作る。受け身で振り回されるのではなく、状況を利用して自分がペースを握る側に回る。それが孫子の言う「勢」の本質です。
この章句が説くこと
勢権主導権
関連する章句
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『呻吟語』内篇・談道・勢は帝王の權、理は聖人の權公卿朝に爭議するに、天子に命有りと曰へば、則ち屏然として敢へて屈直せず。師儒學に相辯ずるに、孔子に言有りと曰へば、則ち寂然として敢へて異同せず。故に天地の間、惟だ理と勢とを最尊と為す。然りと雖も、理は又尊の尊なり。廟堂の上に理を言へば、則ち天子も勢を以て相奪ふを得ず。即し相奪ふとも、理は則ち常に天下萬世に伸ぶ。故に勢は、帝王の權なり。理は、聖人の權なり。帝王に聖人の理無くんば、則ち其の權時有りて屈す。然らば則ち理なる者は、又勢の恃みて以て存亡を為す所なり。莫大の權を以て僭竊の禁無し。此れ儒者の辭せずして敢へて斯道の南面に任ずる所以なり。
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『呻吟語』内篇・應務・因の中に處の權を寓す夫れ勢は、智者の藉りて以て功を成し、愚者の逆らひて以て敗を取る所の者なり。夫れ勢の盛んなるや、天地聖人も裁する能はず。勢の衰ふるや、天地聖人も振ふ能はず。亦た之に因るのみ。之に因る中に處の權を寓す。此れ善く勢を用ふる者なり。乃ち之を裁し之を振ふ所以なり。
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『呻吟語』外篇・治道・聖人は權を以て道を行ふ權の在る所は、利の歸する所なり。聖人は權を以て道を行ひ、小人は權を以て私を濟す。
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『墨子』大取天の人を愛するや、聖人の人を愛するよりも薄し。其の人を利するや、聖人の人を利するよりも厚し。大人の小人を愛するや、小人の大人を愛するよりも薄し。其の小人を利するや、小人の大人を利するよりも厚し。臧を以て其の親と為して之を愛するは、其の親を愛するに非ざるなり。臧を以て其の親と為して之を利するは、其の親を利するに非ざるなり。樂を以て其の子を利すと為して、其の子の為に之を欲するは、其の子を愛するなり。樂を以て其の子を利すと為して、其の子の為に之を求むるは、其の子を利するに非ざるなり。體する所の中に於いて輕重を權る、之を權と謂う。權は是を為すに非ざるなり、非は非を為すに非ざるなり。權は正なり。指を斷ちて以て蚤を存す。利の中に大を取り、害の中に小を取るなり。害の中に小を取るは、害を取るに非ざるなり、利を取るなり。其の取る所の者は、人の執る所なり。盜人に遇いて、指を斷ちて以て身を免るるは、利なり。其の盜人に遇うは、害なり。
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『韓非子』六反第四十六「政を為すは猶ほ沐のごときなり、弃髪有りと雖も、必ず之を為す。」弃髪の費を愛みて長髪の利を忘るるは、権を知らざる者なり。
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『呻吟語』外篇・治道・慎みて權を人に與ふ上に在る者は慎みて權を人に與ふ。
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