孫子 / 始計篇
道者,令民與上同意,可與之死,可與之生,而不畏危也。
新字:道者,令民与上同意,可与之死,可与之生,而不畏危也。
書き下し
道とは、民をして上と意を同じくし、之と死す可く、之と生く可くして、危きを畏れざらしむるなり。
現代語訳
道とは、民が上に立つ者と同じ思いを持ち、上と共に死ぬこともでき、共に生きることもでき、危険を恐れなくなる状態のことである。
解説
五事の筆頭に置かれた道の定義である。精神論ではなく、組織の設計条件として書かれている。孔子が定義したのは「命令が通ること」ではない。上と同じ思いを共有していることだ。同じ絵を見ていない集団は、危機の場面で必ず割れる。注目したいのは、死と生を並べていることである。一緒に死ねる関係だけを言っているのではない。一緒に生きていける関係でもある。追い詰められたときに踏みとどまる力と、平時に共に働き続ける力は、同じ根から出ている。上が何のためにこの事業をやっているのかを語らずに、規律や報酬だけで人を動かそうとしても、いざというときに踏みとどまる力は生まれない。組織を測るとき、最初に見るべきはここである。
この章句が説くこと
道理念五事価値観理念の共有統一
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『講孟余話』盡心下 第三十八章但だ三代以上は道天子に在り、故に道を伝ふると云ふも、大氐礼楽制度なり。礼楽制度は道の文に顕るる者なり。故に堯・舜・禹の如く聖々相承くる者は、別に礼楽制度を論ずるを待たず、唯だ精一の訓あるのみ。殷周易代の際に当りては、前王の礼楽制度に因りて其の道を伝ふるのみにて、別に精一等の口授をすべき様なし。然れども道已に其の中に充ちて其の外に顕るるなり。周衰へて孔孟起り、君相の位なければ、礼楽制度を以て道を伝ふること能はず、徒に仁義道徳を誦して伝ふる迄なり。孟子死後其の伝を得ずとは雖も、荀卿・揚雄・王通・韓愈、宋の周・程・張・朱の如き、皆伝ふる所なしと云ふべからず。其の他漢の司馬遷・劉向、唐の柳宗元、宋の欧陽脩の如き、皆肩を比して相下らず。然れども後世事愈々繁く、論愈々密に、道愈々分るるの弊を免れず。向に周の亡びて秦の天子たるや、悉く三代の礼楽制度を除去し、刑法律令を以て天下を制す。秦自ら滅絶して以来、漢の高祖・光武、唐の太宗、宋の芸祖、明の太祖の如き、千古の英雄一世の聖賢と雖も、其の刑法律令は大氐秦の故に因る。又頗る周の礼楽制度を交へて是れを文飾す。然れども刑法律令は自ら刑法律令、礼楽制度は自ら礼楽制度にて、道の其の中に充実し、外に発越するを見ず。是に於て仁義道徳、已に儒者の私有となり、人君徒に刑法律令礼楽制度の虚名を擁するのみとはなれり。然れども人君儒者、真に憂ひを茲に担ひて其の分裂を傷む者は、明君通儒となることを得、然らざる者は、庸君迂儒たるのみ。
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史記 秦始皇本紀曰く、維れ二十八年、皇帝作始す。法度を端平にし、万物の紀なり。以て人事を明らかにし、父子を合同す。聖智仁義、道理を顕白す。東のかた東土を撫し、以て卒士を省る。事已に大いに畢はり、乃ち海に臨む。皇帝の功、本事を勧労す。農を上び末を除き、黔首是れ富む。普天の下、心を摶め志を揖む。器械量を一にし、書文字を同じくす。日月の照らす所、舟輿の載する所、皆其の命を終へ、意を得ざる莫し。時に応じて事を動かす、是れ維れ皇帝。異俗を匡飭し、水を陵え地を経る。黔首を憂恤し、朝夕懈らず。疑ひを除き法を定め、咸辟くる所を知る。方伯職を分かち、諸治経易なり。挙錯必ず当たり、画くが如くならざる莫し。皇帝の明、四方を臨察す。尊卑貴賤、次行を踰えず。姦邪容れず、皆貞良を務む。細大力を尽くし、敢へて怠荒する莫し。遠邇辟隠、専ら粛荘を務む。端直敦忠、事業常有り。皇帝の徳、四極を存定す。乱を誅し害を除き、利を興し福を致す。事を節するに時を以てし、諸産繁殖す。黔首安寧にして、兵革を用ゐず。六親相保ち、終に寇賊無し。驩欣して教へを奉じ、尽く法式を知る。六合の内は、皇帝の土。西は流沙を渉り、南は北戸を尽くす。東は東海を有ち、北は大夏を過ぐ。人跡の至る所、臣たらざる者無し。功は五帝を蓋ひ、沢は牛馬に及ぶ。徳を受けざる莫く、各其の宇に安んず。維れ秦王天下を兼有し、名を立てて皇帝と為し、乃ち東土を撫し、瑯邪に至る。列侯武城侯王離・列侯通武侯王賁・倫侯建成侯趙亥・倫侯昌武侯成・倫侯武信侯馮毋択・丞相隗林・丞相王綰・卿李斯・卿王戊・五大夫趙嬰・五大夫楊樛従ひ、与に海上に議す。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
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