孫子 / 行軍篇
辭卑而益備者,進也;辭強而進驅者,退也;輕車先出,居其側者,陣也;無約而請和者,謀也;
新字:辞卑而益備者,進也;辞強而進駆者,退也;軽車先出,居其側者,陣也;無約而請和者,謀也;
書き下し
辞卑くして備えを益す者は、進むなり。辞強くして進駆する者は、退くなり。軽車先ず出でて其の側に居る者は、陣するなり。約無くして和を請う者は、謀るなり。
現代語訳
敵の使者の言葉が低姿勢なのに備えを増しているのは、進撃するつもりである。言葉が強硬で進撃の構えを見せるのは、退くつもりである。軽戦車が先に出て側面に位置するのは、陣を敷こうとしている。約束事もないのに和睦を申し入れてくるのは、何かを謀っている。
解説
言葉と行動が食い違っている場面を四つ挙げ、行動のほうを信じよと教えている。低姿勢な言葉と増強される備え。強硬な言葉と退却の準備。言葉は相手が意図的に作れるが、備えの動きは実際の計画を反映する。だから食い違ったときは行動が本当である。最後の一つがとくに鋭い。理由もなく和睦を申し入れてくるのは謀略だ、と。好意的な申し出こそ疑えという指摘である。相手が自分から譲歩してくるとき、そこには必ず理由がある。交渉の場でそのまま使える視点だ。相手の言葉が急に柔らかくなったとき、同時に相手が何をしているかを見る。人員を増やしているのか、別の相手と話しているのか。言葉の変化と行動の変化がずれているなら、ずれているほうに意味がある。
この章句が説くこと
予測相敵過信言行の矛盾言行柔軟性
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