孫子 / 作戦篇
故兵聞拙速,未睹巧之久也。
書き下し
故に兵は拙速を聞くも、未だ巧の久しきを睹ざるなり。
現代語訳
拙くとも速い戦はあるが、巧みに長引く戦はない。
解説
「兵は拙速を聞くも、未だ巧の久しきを睹ざるなり」——作戦篇の有名な一節です。多少やり方がまずくても素早く決着させた戦いはあるが、巧みでありながら長引いた戦いで成功した例は見たことがない、と孫子は言い切ります。完璧を期して時間をかけるより、多少荒くても速く決めるほうが勝る、という徹底したスピード重視の姿勢です。仕事でも、精度を追い求めて着手や決断が遅れるより、多少不完全でも早く動いて修正していくほうが、結果的にうまくいく場面は多いものです。「巧遅は拙速に如かず」。時間そのものがコストであり、リスクを増やす。完璧主義で長引かせる危うさと、素早く動くことの価値を、この一節は端的に教えます。
この章句が説くこと
スピード効率
関連する章句
-
老子・第80章小国寡民、什伯の器有るも而も用いざらしめ、民をして死を重んじて遠く徙らざらしむ。舟輿有りと雖も、之に乗る所無く、甲兵有りと雖も、之を陳ぬる所無し。人をして復た縄を結びて之を用いしむ。其の食を甘しとし、其の服を美とし、其の居に安んじ、其の俗を楽しむ。隣国相望み、鶏犬の声相聞こゆるも、民は老死に至るまで相往来せず。
-
老子・第48章学を為せば日々に益し、道を為せば日々に損す。之を損じて又た損じ、以て無為に至る。無為にして而も為さざる無し。天下を取るは常に無事を以てす。其の有事に及びては、以て天下を取るに足らず。
-
孫子・謀攻篇故に善く兵を用うる者は、人の兵を屈するも戦うに非ざるなり。人の城を抜くも攻むるに非ざるなり。人の国を毀るも久しきに非ざるなり。必ず全きを以て天下に争う。故に兵頓れずして利全くす可し。此れ謀攻の法なり。
-
うひ山ぶみ・第七段同じく精力を用ひながらも、そのすぢそのまなびやうによりて、得失あるべきこと也、
-
老子・第53章我をして介然として知有らしめ、大道を行かしめば、唯だ施すことを是れ畏る。大道は甚だ夷らかなるに、而も民は径を好む。朝は甚だ除まり、田は甚だ蕪れ、倉は甚だ虚し。文綵を服し、利剣を帯び、飲食に厭き、財貨余り有り。是を盗夸と謂う。道に非ざるかな。
-
孫子・行軍篇奔走して兵を陳ぬる者は、期するなり。半ば進み半ば退く者は、誘うなり。