臣軌 / 帝王学
臣軌(帝王学)の名句を、現代語訳と実践の解説つきで。全30句。
則天武后が垂拱元年(六八五)に撰し、臣下に配った書です。上下二巻、序と十章から成り、同体・至忠・守道・公正・匡諫・誠信・慎密・廉潔・良将・利人と、臣下の側の作法を章ごとに説きます。唐太宗が皇太子に遺した『帝範』が君主の側の書であるのに対し、こちらはその裏返しにあたり、古くから二書は並べて読まれてきました。序の締めくくりが書の動機を語ります——「人に贈るに財を以てする者は、唯だ即目の歓を申ぶるのみ、人に贈るに言を以てする者は、能く終身の福を致す」。第一章の題は「同体」で、君と臣を頭と四肢、心と耳目にたとえ、互いを必要としてはじめて一つの体になると説きます。読みどころは公正章に引かれた六正六邪でしょう。聖臣・大臣・忠臣・智臣・貞臣・直臣という六つの型と、具臣・諛臣・奸臣・讒臣・賊臣・亡国の臣という六つの型を並べ、臣下を測る物差しにしています。ほかにも「小忠は大忠の賊なり」(至忠章)、和と同を羹にたとえた晏子の問答(匡諫章)、「下を損じて上を益すは、人臣の浅慮なり」(利人章)など、そのまま組織に当たる言葉が並びます。なお**この書は中国では早くに散逸し、日本に伝わった抄本によって残りました**。巻末の識語には、唐の目録には載るが宋の目録にはなく、清の四庫全書にも帝範だけが収められて臣軌は入らなかった、と記されています。師導では維基文庫の全文(簡体字混入率〇・〇〇%)を底本に、序・全十章・跋のすべてから三十の章句を収めました。本文中の( )の注は本文から外し、読点は日本式に改めています。