臣軌 / 序
夫麗容雖麗,猶待鏡以端形;明德雖明,終假言而榮行。今故以茲所撰,普錫具僚,誠非筆削之工,貴申裨導之益。
新字:夫麗容雖麗,猶待鏡以端形;明徳雖明,終仮言而栄行。今故以茲所撰,普錫具僚,誠非筆削之工,貴申裨導之益。
書き下し
夫れ麗容は麗しと雖も、猶お鏡を待ちて以て形を端し、明徳は明らかなりと雖も、終に言を仮りて行いを栄やかす。今故に茲の撰する所を以て、普く具僚に錫う。誠に筆削の工に非ず、裨導の益を申ぶるを貴ぶ。
現代語訳
美しい容貌であっても、やはり鏡を使って姿かたちを整えるものであり、明らかな徳があっても、結局は言葉の助けを借りて行いを輝かせるものである。そこで今、ここに撰述したものを、広く官僚一同に賜う。まことに文章の出来栄え(筆削の工み)を誇るものではなく、補い導く益を示すことを大切にするのである。
解説
序の中ほどで、なぜ優れた臣下にもこの書を配るのかを、鏡のたとえで説明する一段である。美しい顔も鏡で整え、明らかな徳も言葉を借りて行いに光を添える。つまりこの書は臣下の欠点を責めるためではなく、すでにある徳を映し出して整える鏡だというのである。そして文章の巧みさを誇るのではなく、助けとなり導きとなる実益を重んじると断っている。注は「筆削」について、孔子が『春秋』を書いたとき弟子の子夏らが一言も加えられなかった話を引いている。今でいえば、研修や行動指針は能力の足りない人のためだけでなく、できる人が自分を映して点検する鏡として役に立つ、ということである。
関連する章句
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『臣軌』序蓋し聞く、惟れ天は象を著し、庶品は照臨に同じく、惟れ地は章を含み、群生は亭育に等しと。朕、庸昧を以て、忝くも坤元に位す。厚載の仁に斉しからんことを思い、式て普覃の恵みを馨らしむ。乃ち中、乃ち外、思養の志は殊なる靡く、惟れ子、惟れ臣、慈誘の情は隔て無し。常に願う、甫めて微懇を殫くし、上は紫機を翊け、爰に衆僚を須ちて、聿に玄化を匡さんことを。伏して以うに天皇は、明は則哲に逾え、志は旁求に切なり。簪裾は川嶽の霊を総べ、珩珮は星辰の秀を聚む。群英は職に蒞み、衆彦は司を分かつ。以て広く淳風を扇ぎ、長く宝祚を隆んにするに足る。但だ母の子に於けるや、慈愛特に深し。復た已に忠良を積むと雖も、猶お且つ勧励を垂れんことを思う。昔、文伯既に達して、仍お喩軸の言を加え、孟軻已に賢にして、更に断機の誨えを益す。良に情は撫字に隆く、心は助成を欲するを以てなり。比者(このごろ)、太子及び王は已に修身の訓を撰し、群公列辟は未だ忠告の規を敷かず。近ごろ暇辰を以て、心を策府に遊ばせ、聊か煒管に因りて、用て虚襟を写す。故に聞く所を綴叙し、以て『臣軌』一部と為す。周朝の十乱を想いて、爰に十章を著し、殷室の両臣を思いて、分かちて両巻と為す。言行を発揮し、身心を鎔範する所以なり。事上の軌模と為し、臣下の縄準と作す。若し乃ち遐かに綿載を想い、眇かに前修を鑒みれば、元首は尊きに居り、股肱は力を宣べざるは莫し。棟梁に資りて大廈を成し、舟楫に憑りて巨川を済る。唱和相依り、功を同じくし体を共にす。
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『臣軌』卷上 公正章それ昧金に正さずして瑩鏡に照らす者は、瑩の能く明らかなるを以てなり。流波に鑑みずして静水に鑑みる者は、静の能く清きを以てなり。鏡・水は明清の性を以て、故に能く物の形を形し、その善悪を見わす。而して物に怨む者無きは、鏡水の至公にして私無きを以てなり。鏡水は至公なるも、猶お怨みを免る。而るを況んや人に於てをや。
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『臣軌』序若し茲の箴戒を佩びて、彼の韋弦に同じくし、己を修むるに必ずその規を顧み、行いを立つるに毎にその則を観しめば、自然に栄は歳に随いて積み、慶は時と与に新たにして、家は国と共に安く、下は上と倶に泰からん。察微の士、宜しく三思すべき所なり。御撰。
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『臣軌』序何となれば、正言はこれ重く、玄珠も比して尚お軽し。巽語は珍と為し、蒼璧も喩えて宝に非ず。是を知る、人に贈るに財を以てする者は、唯だ即目の歓を申ぶるのみ、人に贈るに言を以てする者は、能く終身の福を致す。
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『臣軌』序然れば則ち君親すでに立ちて、忠孝焉に形わる。国に奉じ家に奉ずる、率由の道は寧んぞ二ならん、君に事え父に事うる、資敬の途はこれ一なり。臣主の義、それ至れるかな。休戚はこれ均し、深く鑒みざるべけんや。
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『臣軌』卷下 利人章『賈子』に曰く、「上古の代は、務め農を勧むるに在り。故に三年耕して一年の蓄え余り、九年耕して三年の蓄え余り、三十年耕して人に十年の蓄え余る。故に堯の水九年、湯の旱七載、野に青草無くして人に饑色無き者は、誠に此の備え有ればなり」と。故に国を建つるの本は、必ず農に在り。忠臣の人を利せんことを思う者は、務め勧導に在り。家給り人足れば、則ち国自ずから安んず。論に曰く、夫れ君臣の道は、上下相資る。水を渉るの舟航に喩え、空を翔るの羽翼に比す。故に至神攸に契えば、則ち星象穹蒼より降り、妙感潜かに通ずれば、則ち風雲寤寐に彰わる。其の体を同じくするや、則ち股肱耳目も以て其の同じきに匹するに足らず、其の政を益すや、則ち麹蘖塩梅も未だ以て其の益に方ぶ可からず。諒直の操は此れに由りて興り、節義の風は斯れに因りて以て著る。是に知る、家と国とは異ならず、君と親とは一に帰すと。己を顕し名を揚ぐるは、惟れ忠惟れ孝なり。毎に宮闈の暇景を以て、博く瓊編を覧、往哲の弼諧を観、前言の亀鏡を睹るに、未だ嘗て文に臨みて嗟尚し、巻を撫して循環せずんばあらず。庶わくは匡翊の賢をして、更に夔・竜の美を越えしめんことを。爰に翰墨を申べ、載せて縑緗に列ぬ。何となれば則ち、栄辱は門無く、惟だ人の召く所なればなり。若し心をして大道に帰せしめ、情は至忠に切に、務めて公平を守り、貴んで誠信を敦くし、廉潔を抱きて行いと為し、慎密を懐きて以て身を修め、上に奉じては匡諫の規を崇び、下を恤みては利人の術を思わしめば、自然に名実兼ねて茂り、禄位倶に延び、栄は召かずして自ら来たり、辱は遣らずして斯に去らん。然らば則ち忠正なる者は福を致すの本、戒慎なる者は慶を集むるの源にして、影の形に随うが若く、猶お声の響きを逐うがごとし。凡百の群彦、勖めざる可けんや。撰臣軌下終。
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