臣軌 / 序
蓋聞惟天著象,庶品同於照臨;惟地含章,群生等於亭育。朕以庸昧,忝位坤元。思齊厚載之仁,式馨普覃之惠。乃中乃外,思養之志靡殊;惟子惟臣,慈誘之情無隔。常願甫殫微懇,上翊紫機,爰須眾僚,聿匡玄化。伏以天皇,明逾則哲,志切旁求。簪裾總川嶽之靈;珩珮聚星辰之秀。群英蒞職,眾彥分司。足以廣扇淳風,長隆寶祚。但母之於子,慈愛特深。雖復已積忠良,猶且思垂勸勵。昔文伯既達,仍加喻軸之言;孟軻已賢,更益斷機之誨。良以情隆撫字,心欲助成。比者,太子及王已撰修身之訓,群公列辟未敷忠告之規。近以暇辰,遊心策府,聊因煒管,用寫虛襟。故綴敘所聞,以為《臣軌》一部。想周朝之十亂,爰著十章;思殷室之兩臣,分為兩卷。所以發揮言行,鎔範身心。為事上之軌模,作臣下之繩準。若乃遐想綿載,眇鑒前修;莫不元首居尊,股肱宣力。資棟梁而成大廈,憑舟楫而濟巨川。唱和相依,同功共體。
新字:蓋聞惟天著象,庶品同於照臨;惟地含章,群生等於亭育。朕以庸昧,忝位坤元。思斉厚載之仁,式馨普覃之恵。乃中乃外,思養之志靡殊;惟子惟臣,慈誘之情無隔。常願甫殫微懇,上翊紫機,爰須衆僚,聿匡玄化。伏以天皇,明逾則哲,志切旁求。簪裾総川嶽之霊;珩珮聚星辰之秀。群英莅職,衆彦分司。足以広扇淳風,長隆宝祚。但母之於子,慈愛特深。雖復已積忠良,猶且思垂勧励。昔文伯既達,仍加喩軸之言;孟軻已賢,更益断機之誨。良以情隆撫字,心欲助成。比者,太子及王已撰修身之訓,群公列辟未敷忠告之規。近以暇辰,遊心策府,聊因煒管,用写虚襟。故綴敘所聞,以為《臣軌》一部。想周朝之十乱,爰著十章;思殷室之両臣,分為両巻。所以発揮言行,鎔範身心。為事上之軌模,作臣下之縄準。若乃遐想綿載,眇鑒前修;莫不元首居尊,股肱宣力。資棟梁而成大廈,憑舟楫而済巨川。唱和相依,同功共体。
書き下し
蓋し聞く、惟れ天は象を著し、庶品は照臨に同じく、惟れ地は章を含み、群生は亭育に等しと。朕、庸昧を以て、忝くも坤元に位す。厚載の仁に斉しからんことを思い、式て普覃の恵みを馨らしむ。乃ち中、乃ち外、思養の志は殊なる靡く、惟れ子、惟れ臣、慈誘の情は隔て無し。常に願う、甫めて微懇を殫くし、上は紫機を翊け、爰に衆僚を須ちて、聿に玄化を匡さんことを。伏して以うに天皇は、明は則哲に逾え、志は旁求に切なり。簪裾は川嶽の霊を総べ、珩珮は星辰の秀を聚む。群英は職に蒞み、衆彦は司を分かつ。以て広く淳風を扇ぎ、長く宝祚を隆んにするに足る。但だ母の子に於けるや、慈愛特に深し。復た已に忠良を積むと雖も、猶お且つ勧励を垂れんことを思う。昔、文伯既に達して、仍お喩軸の言を加え、孟軻已に賢にして、更に断機の誨えを益す。良に情は撫字に隆く、心は助成を欲するを以てなり。比者(このごろ)、太子及び王は已に修身の訓を撰し、群公列辟は未だ忠告の規を敷かず。近ごろ暇辰を以て、心を策府に遊ばせ、聊か煒管に因りて、用て虚襟を写す。故に聞く所を綴叙し、以て『臣軌』一部と為す。周朝の十乱を想いて、爰に十章を著し、殷室の両臣を思いて、分かちて両巻と為す。言行を発揮し、身心を鎔範する所以なり。事上の軌模と為し、臣下の縄準と作す。若し乃ち遐かに綿載を想い、眇かに前修を鑒みれば、元首は尊きに居り、股肱は力を宣べざるは莫し。棟梁に資りて大廈を成し、舟楫に憑りて巨川を済る。唱和相依り、功を同じくし体を共にす。
現代語訳
聞くところでは、天は日月星辰の象(かたち)を示して、あらゆるものを等しく照らし、地は美しい模様を内に含んで、あらゆる生き物を等しく育てるという。私は愚かな身でありながら、かたじけなくも皇后の位(坤元、地の徳にあたる后の位)にある。大地がすべてを載せるような仁に並びたいと願い、広く行きわたる恵みを香らせたいと思う。内の者にも外の者にも、養い育てようとする志に違いはなく、子にも臣にも、慈しみ導こうとする情に隔てはない。常に願うのは、わずかながら真心を尽くして、上は天子の政務(紫機)を助け、そのために多くの官僚の力を借りて、天子の深い教化を正しく支えることである。つつしんで思うに、天皇(高宗)は、人を見抜く明察が『書経』にいう「知人則哲」を超え、賢者を広く求める志が切実である。朝廷に仕える高官たちは山川の霊気を集め、玉を帯びる者たちは星々の秀でた気を集めたような人物ばかりである。多くの英才が職務に臨み、多くの俊才が役目を分担している。これで十分に淳朴な風を広くあおぎ、帝位の福を長く盛んにすることができる。ただ、母が子に対する慈愛は格別に深い。すでに忠良の臣がそろっていても、なお励ましの言葉を垂れたいと思うのである。昔、文伯(公父文伯、魯の大夫)はすでに出世していたが、母はなお車軸にたとえた戒めを加え、孟軻(孟子)はすでに賢かったが、母はさらに織りかけの布を断ち切る教えを与えた。まことに、子を慈しむ情が厚く、その成長を助けたいと心から願ったからである。近ごろ、太子と諸王のためにはすでに修身の訓えが撰述されたが、群臣と諸侯のためには、まだ忠告の規範が示されていない。そこで近ごろ暇な日に、書物の府に心を遊ばせ、いささか赤い筆を執って、胸の内を書き写した。こうして聞き知ったことを綴り、『臣軌』一部とした。周の朝廷の治臣十人(十乱)を思って十章とし、殷の二人の名臣(伊尹・傅説)を思って二巻に分けた。これによって言行を明らかにし、身と心を型に鋳るように正そうとするのである。君に仕える者の規範とし、臣下の物差しとするのである。はるか長い年月を思い、遠く昔の賢人を顧みれば、元首が尊い位にあって、手足となる臣が力を尽くさなかった例はない。棟や梁の材に頼って大きな建物ができあがり、舟や櫂に頼って大河を渡る。唱える者と和する者が互いに寄り添い、功を同じくし、体を一つにするのである。
解説
関連する章句
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『臣軌』序然れば則ち君親すでに立ちて、忠孝焉に形わる。国に奉じ家に奉ずる、率由の道は寧んぞ二ならん、君に事え父に事うる、資敬の途はこれ一なり。臣主の義、それ至れるかな。休戚はこれ均し、深く鑒みざるべけんや。
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『臣軌』序何となれば、正言はこれ重く、玄珠も比して尚お軽し。巽語は珍と為し、蒼璧も喩えて宝に非ず。是を知る、人に贈るに財を以てする者は、唯だ即目の歓を申ぶるのみ、人に贈るに言を以てする者は、能く終身の福を致す。
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『臣軌』序夫れ麗容は麗しと雖も、猶お鏡を待ちて以て形を端し、明徳は明らかなりと雖も、終に言を仮りて行いを栄やかす。今故に茲の撰する所を以て、普く具僚に錫う。誠に筆削の工に非ず、裨導の益を申ぶるを貴ぶ。
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『臣軌』卷下 利人章『賈子』に曰く、「上古の代は、務め農を勧むるに在り。故に三年耕して一年の蓄え余り、九年耕して三年の蓄え余り、三十年耕して人に十年の蓄え余る。故に堯の水九年、湯の旱七載、野に青草無くして人に饑色無き者は、誠に此の備え有ればなり」と。故に国を建つるの本は、必ず農に在り。忠臣の人を利せんことを思う者は、務め勧導に在り。家給り人足れば、則ち国自ずから安んず。論に曰く、夫れ君臣の道は、上下相資る。水を渉るの舟航に喩え、空を翔るの羽翼に比す。故に至神攸に契えば、則ち星象穹蒼より降り、妙感潜かに通ずれば、則ち風雲寤寐に彰わる。其の体を同じくするや、則ち股肱耳目も以て其の同じきに匹するに足らず、其の政を益すや、則ち麹蘖塩梅も未だ以て其の益に方ぶ可からず。諒直の操は此れに由りて興り、節義の風は斯れに因りて以て著る。是に知る、家と国とは異ならず、君と親とは一に帰すと。己を顕し名を揚ぐるは、惟れ忠惟れ孝なり。毎に宮闈の暇景を以て、博く瓊編を覧、往哲の弼諧を観、前言の亀鏡を睹るに、未だ嘗て文に臨みて嗟尚し、巻を撫して循環せずんばあらず。庶わくは匡翊の賢をして、更に夔・竜の美を越えしめんことを。爰に翰墨を申べ、載せて縑緗に列ぬ。何となれば則ち、栄辱は門無く、惟だ人の召く所なればなり。若し心をして大道に帰せしめ、情は至忠に切に、務めて公平を守り、貴んで誠信を敦くし、廉潔を抱きて行いと為し、慎密を懐きて以て身を修め、上に奉じては匡諫の規を崇び、下を恤みては利人の術を思わしめば、自然に名実兼ねて茂り、禄位倶に延び、栄は召かずして自ら来たり、辱は遣らずして斯に去らん。然らば則ち忠正なる者は福を致すの本、戒慎なる者は慶を集むるの源にして、影の形に随うが若く、猶お声の響きを逐うがごとし。凡百の群彦、勖めざる可けんや。撰臣軌下終。
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『臣軌』題《臣軌》後唐の武后撰『臣軌』二巻、太宗の『帝範』と並び行わる。今も亦た合刻本の世に流布する有り。二書は『唐志』に著録せられて『宋志』に載せず。『臣軌』は唯だ鄭樵の『芸文略』のみ並せてこれを載す。その他に見ゆる無きなり。清の乾隆中『四庫全書』を纂するに及び、『帝範』は独り『永楽大典』より録出せられて、『臣軌』に及ばず。則ち亦た存せざるに似たり。
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『臣軌』序若し茲の箴戒を佩びて、彼の韋弦に同じくし、己を修むるに必ずその規を顧み、行いを立つるに毎にその則を観しめば、自然に栄は歳に随いて積み、慶は時と与に新たにして、家は国と共に安く、下は上と倶に泰からん。察微の士、宜しく三思すべき所なり。御撰。
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