斉家論 / 実業
斉家論(実業)の名句を、現代語訳と実践の解説つきで。全52句。
石田梅岩(一六八五〜一七四四)が最晩年に著した、倹約をめぐる問答です。延享元年(一七四四)五月の自序があり、梅岩はその年の九月に六十歳で亡くなりました。通称『倹約斉家論』。序と上下二巻から成ります。上巻は、講席を開いて十五年、評判はまちまちだったと振り返るところから始まります。門弟が伝える孝子・節婦の話、奢りが家を潰していく具体の数々を挙げながら、倹約とは物惜しみではなく、奢りを退けて家を斉えることだと説きます。下巻では、儒書の講釈に袴を着けないのは礼を捨てることではないかと問う人に、礼の実は心にあると答え、最後は「倹約は只衣服財器の事のみにあらず、惣て私曲なく、心を正するやうに教へたき志なり」と結ばれます。倹約を家計の技術から心の姿勢へと押し広げたところに、この書の値打ちがあります。底本は『日本教育文庫 心学篇』(同文館、一九一一)所収の斉家論で、原本の表記のまま(平仮名交じり・旧字・読点のみ)翻刻されたものです。国立国会図書館の全文テキストを画像上の座標から読み順を組み直し、表記を改めた四つの版(至誠堂・嵩山堂『心学道話』、『国民思想叢書』、『心学道話全集』)と突き合わせて、読み誤りを一件ずつ直しました(百四箇所)。師導では序と上下二巻を五十二の章句に収め、本文一万五千二百四十二字の百パーセントを覆いました。都鄙問答と対で読まれる書なので、学派は同じ「実業」に置いています。