斉家論 / 下
儉約序伏て惟に、御代の泰平目出度治る事、上は貴く下は賤く、尊卑の位ましまし、有がたくも孝を鬼神に致、飮食衣服宮室の類は薄くなし、儉を用ひたまひ、惠みを萬邦に垂んと、御力を盡し玉ふ、至德光輝普くあらはれ、すゑが末まで安穩に、照し玉はぬ里もなし、實に徒然艸にも、世を治る道は、儉約を本とすといへり、蓋儉約と云事、世に多く誤り、吝き事と心得たる人あり、左にはあらず、儉約は財寶を節く用ひ、我分限に應じ、過不及なく、物の費捨る事を厭ひ、時にあたり法にかなふやうに用ゆる事成べし、それ天下安穩に治り、有がたく辱事、一をあげていはゞ、財寶は數千里のあなたより、數千里のこなたへ取通し、
新字:倹約序伏て惟に、御代の泰平目出度治る事、上は貴く下は賤く、尊卑の位ましまし、有がたくも孝を鬼神に致、飲食衣服宮室の類は薄くなし、倹を用ひたまひ、恵みを万邦に垂んと、御力を尽し玉ふ、至徳光輝普くあらはれ、すゑが末まで安穏に、照し玉はぬ里もなし、実に徒然艸にも、世を治る道は、倹約を本とすといへり、蓋倹約と云事、世に多く誤り、吝き事と心得たる人あり、左にはあらず、倹約は財宝を節く用ひ、我分限に応じ、過不及なく、物の費捨る事を厭ひ、時にあたり法にかなふやうに用ゆる事成べし、それ天下安穏に治り、有がたく辱事、一をあげていはゞ、財宝は数千里のあなたより、数千里のこなたへ取通し、
書き下し
倹約序。伏して惟みるに、御代の泰平目出度く治まる事、上は貴く下は賤しく、尊卑の位ましまし、有りがたくも孝を鬼神に致し、飲食衣服宮室の類は薄くなし、倹を用ひたまひ、恵みを万邦に垂れんと、御力を尽し玉ふ。至徳光輝普くあらはれ、すゑが末まで安穏に、照し玉はぬ里もなし。実に徒然艸にも、世を治むる道は、倹約を本とすといへり。蓋し倹約と云ふ事、世に多く誤り、吝き事と心得たる人あり。左にはあらず。倹約は財宝を節く用ひ、我が分限に応じ、過不及なく、物の費え捨つる事を厭ひ、時にあたり法にかなふやうに用ゆる事成るべし。それ天下安穏に治まり、有りがたく辱き事、一をあげていはゞ、財宝は数千里のあなたより、数千里のこなたへ取り通し、
現代語訳
倹約序。つつしんで思うに、この御代の泰平がめでたく治まっているのは、上は貴く下は賤しく、尊卑の位がしっかり定まり、ありがたいことに、祖先の霊には孝を尽くしながら、飲食・衣服・住まいは質素にし、倹約をなさって、恵みを国じゅうに行き渡らせようと力を尽くしておられるからです。至高の徳の光が広く現れ、末々まで安らかで、照らされない里はありません。まことに『徒然草』にも、世を治める道は倹約を本とする、とあります。そもそも倹約ということは世間で多く誤解され、けちなことだと心得ている人がいます。そうではありません。倹約とは、財宝を節度をもって用い、自分の分限に応じ、過不足なく、物をむだに費やし捨てることを嫌い、時にかない法にかなうように用いることです。天下が安らかに治まっているありがたさを一つ挙げれば、財宝は数千里の向こうから数千里のこちらへと運ばれ、
解説
この章句が説くこと
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説苑・說叢聖人の衣や體に便にして以て身を安んじ、其の食や腹に安んず。衣を適し食を節し、口目に聽かず。
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説苑・雜言孔子曰く、「中人の情は、余り有れば則ち侈り、足らざれば則ち倹にし、禁無ければ則ち淫し、度無ければ則ち失し、欲を縦にすれば則ち敗る。飲食に量有り、衣服に節有り、宮室に度有り、畜聚に数有り、車器に限有るは、以て乱の源を防ぐなり。故に夫れ度量は明らかにせざる可からず、善言は聴かざる可からず」と。
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葉隠・聞書第一大酒にて後れを取りたる人、数多(あまた)なり。別して残念の事なり。まず我が丈け分(たけぶん)をよく覚え、その上は飲まぬ様にありたきなり。そのうちにも、時により、酔い過す事あり。酒座(しゅざ)には就中(なかんずく)気をぬかさず、図(はか)らぬ事出来(しゅったい)ても間に合う様に、了簡(りょうけん)あるべき事なり。また酒宴は……
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葉隠・聞書第一時により、人に用(よう)をいい、物をもらう事有り。それも度重(たびかさ)ならば、無心(むしん)になり、いやしかるべし。何とぞ済む事ならば、用をいわぬように有りたきなり。
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論語・述而篇子は釣りして綱せず、弋して宿を射ず。