古語拾遺 / 神道
古語拾遺(神道)の名句を、現代語訳と実践の解説つきで。全28句。
大同二年(八〇七)、斎部広成が平城天皇の下問に応じて撰んだ、一巻の書です。斎部氏は天太玉命を祖とし、中臣氏とともに朝廷の祭祀を担ってきた氏族でした。書は序で「文字ができて以来、人は古を語らなくなり、うわべの華やかさを競って古老を笑うようになった」と嘆じ、記紀に漏れた古い伝えを補うと宣言します。前半は神代の記事です。天石窟に籠もった天照大神を迎えるために八十万の神が集まり、鏡・玉・布・建築・金属と職掌を分けて物を作る段、大己貴神と少彦名神が「力を戮せ心を一にして天下を経営し」病を治す方法を定めた段などが並びます。後半は制度の記録に変わります。神の物と公の物が同じ蔵に入っていた斎蔵から、内蔵・大蔵が分かれて三蔵となり、出納する者・帳簿を照合する者・検校する者が別に置かれるまでが記され、日本の会計史の基本史料とされてきました。そして末尾には「所遺一なり」から「所遺十一なり」まで、中臣氏に権が偏った現状の不備が箇条で並びます。「唯だ当年の労を序して、天降の績に本づかず」——目先の働きだけで序列を決め、積み重ねを勘定に入れていない、という評価制度への批判は、そのまま今日にも通じます。師導では維基文庫の全文(正字・簡体字混入率〇・〇五%)を底本に、序・本文・跋から二十八の場面を収めました。割注は本文から外してあります。章題は本サイトの便宜で、原典にはありません。跋で広成自身が「神代の事は、そのまま信じよというのは実に難しい」と断っていることも、この書を読むうえで押さえておきたい一点です。