古語拾遺 / 八岐大蛇と天叢雲
素戔鳴神自天而降到於出雲國簸之川上。以天十握釼。斬八岐大蛇。其尾中得一靈釼。其名曰天叢雲。乃獻上於天神也。然後素戔鳴神娶國神女。生大己貴神。遂就於根國矣。
新字:素戔鳴神自天而降到於出雲国簸之川上。以天十握釼。斬八岐大蛇。其尾中得一霊釼。其名曰天叢雲。乃献上於天神也。然後素戔鳴神娶国神女。生大己貴神。遂就於根国矣。
書き下し
素戔鳴神、天より降りて出雲国の簸の川上に到り、天の十握剣を以て八岐大蛇を斬る。其の尾の中に一つの霊剣を得たり。其の名を天叢雲と曰う。乃ち天神に献上するなり。然る後に素戔鳴神、国神の女を娶りて大己貴神を生み、遂に根国に就く。
現代語訳
素戔鳴神は天から降って出雲国の簸の川(斐伊川)の川上に着き、天の十握剣で八岐大蛇を斬った。その尾の中から一振りの霊剣を得た。その名を天叢雲という。そこでこれを天の神に献上した。その後、素戔鳴神は国つ神の娘を娶って大己貴神(おおなむちのかみ、大国主神)を生み、ついに根の国へ去った。
解説
天を追われた素戔鳴神が、出雲で八岐大蛇を斬る。古語拾遺はこの有名な話をわずか数行で済ませ、要点を二つだけ残している。一つは、尾から出た霊剣を天の神に献上したこと。この天叢雲剣が後に草薙剣と呼ばれ、皇孫に授けられ、日本武尊が携え、尾張の熱田社に留まる。書の後半で広成が、その剣を祭る礼が欠けていると訴える、その出発点がここにある。もう一つは、大己貴神を生んだこと。次の段で少彦名神とともに国を経営するのがこの神である。罪を負って追われた者が、追われた先で国の宝を得て差し出し、次の世代を残して去る。処分された者の働きを、その後の物語から消さずに書き留めている点に、この書の筆の公平さがある。
関連する章句
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