師導古典を学びたいすべての人に

古語拾遺 / 鳥見山の霊畤

又令天富命率供作諸氏。造作大幣訖。令天種子命解除天罪國罪事。所謂天罪者上既設訖。國罪者國中人民所犯之罪。其事具在中臣祓詞。爾乃立靈畤於鳥見山中。天富命陳幣。祝詞禋祀皇天。徧秩羣望以答神祇之恩焉。是以中臣齋部二氏倶掌祠祀之職。猨女君氏供神樂之事。自餘諸氏各有其職也。

新字:又令天富命率供作諸氏。造作大幣訖。令天種子命解除天罪国罪事。所謂天罪者上既設訖。国罪者国中人民所犯之罪。其事具在中臣祓詞。爾乃立霊畤於鳥見山中。天富命陳幣。祝詞禋祀皇天。遍秩羣望以答神祇之恩焉。是以中臣斎部二氏倶掌祠祀之職。猨女君氏供神楽之事。自余諸氏各有其職也。

書き下し

又天富命をして供作の諸氏を率いて、大幣を造作せしむること訖りて、天種子命をして天罪・国罪の事を解除せしむ。所謂る天罪は、上に既に説き訖る。国罪は、国中の人民の犯す所の罪なり。其の事、具さに中臣の祓詞に在り。爾に乃ち霊畤を鳥見山の中に立て、天富命幣を陳ね、祝詞して皇天を禋祀し、徧く群望を秩して、以て神祇の恩に答う。是を以て中臣・斎部の二氏、倶に祠祀の職を掌り、猨女君氏は神楽の事に供す。自余の諸氏も各々其の職有り。

現代語訳

また天富命に、品々を作る諸氏を率いさせて大幣を造り終えると、天種子命(あめのたねこのみこと、中臣氏の祖)に天つ罪・国つ罪を祓い清めさせた。いわゆる天つ罪は、前にすでに述べた。国つ罪とは、国の中の人々が犯す罪である。そのことは詳しく中臣の祓詞(大祓詞)にある。そこで鳥見山の中に霊畤(まつりのにわ)を設け、天富命が幣を並べ、祝詞を奏して天の神を祭り、あまねく山川の神々を順序立てて祭って、天つ神・国つ神の恵みに応えた。こうして中臣・斎部の二氏はともに祭祀の職をつかさどり、猨女君氏は神楽のことを務めた。その他の諸氏にも、それぞれの職があった。

解説

建国の祭りの締めくくりとして、祓えと天神の祭りが記される。天富命が大幣を造り、天種子命が天つ罪・国つ罪を祓い、鳥見山に霊畤を設けて天の神を祭った。鳥見山に霊畤を立てたことは、日本書紀の神武天皇の条にも見える。この段の要は最後の一文で、中臣と斎部の二氏がともに祭祀をつかさどり、猨女君が神楽を務め、ほかの諸氏にもそれぞれ職があった、とする。祭祀が一氏の専有ではなく、複数の氏の分担で始まったことを、建国の時点で確定させておく書き方である。後段で中臣氏が伊勢の宮司や幣帛使を独占していると訴えるとき、この一文が基準になる。始まりの役割分担を書き残しておけば、後に偏りが生じたとき、戻るべき原点として示すことができる。

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る