古語拾遺 / 御歳神
昔在神代。大地主神營田之日。以牛宍食田人。于時御歲神之子。至於其田唾饗而還。以狀告父。御歲神發怒。以蝗放其田。苗葉忽枯損似篠竹。
新字:昔在神代。大地主神営田之日。以牛宍食田人。于時御歳神之子。至於其田唾饗而還。以状告父。御歳神発怒。以蝗放其田。苗葉忽枯損似篠竹。
書き下し
昔神代に在りて、大地主神、田を営むの日、牛の宍を以て田人に食わしむ。時に御歳神の子、其の田に至りて唾き饗して還り、状を以て父に告ぐ。御歳神怒りを発し、蝗を以て其の田に放つ。苗葉忽ち枯れ損じて篠竹に似たり。
現代語訳
昔、神代のこと、大地主神が田仕事をする日に、牛の肉を田人に食べさせた。そのとき御歳神の子がその田に来て、唾を吐いて饗応を受けて帰り、そのありさまを父に告げた。御歳神は怒って、蝗をその田に放った。苗の葉はたちまち枯れ損なわれて、篠竹のようになってしまった。
解説
古語拾遺の末尾に置かれた、農耕儀礼の由来譚である。大地主神が田人に牛の肉をふるまったことが禁忌に触れ、御歳神の怒りを買って蝗が発生し、苗が篠竹のようになった。この後、占いによって原因を突き止め、白猪・白馬・白鶏を献じて怒りを解き、麻の柄で作った具や押草・鳥扇など具体的な駆除の作法が示され、そのとおりにすると苗が茂って豊作になった、と続く。神話の形をしているが、中身は害虫の発生原因を調べて対処法を確立した記録である。今も神祇官が白猪・白馬・白鶏で御歳神を祭るのはこの縁による、と広成は結ぶ。祭りが、原因究明と対処の記憶装置になっている。
この章句が説くこと
御歳神蝗の害白猪白馬白鶏原因究明と作法