古語拾遺 / 天津神籬と斎庭の穂
仍以天兒屋命。太玉命。天鈿女命使配侍焉。因又敕曰。吾則起樹天津神籬。及天津磐境。當爲吾孫奉齋矣。汝天兒屋命太玉命二神。宜持天津神籬。降於葦原中國。亦爲吾孫奉齋焉。惟爾二神共侍殿内能爲防護。宜以吾高天原所御齋庭之穗。亦當御於吾兒矣。宜太玉命率諸部神。供奉其職如天上儀。仍令諸神亦與陪從。復敕大物主神。宜領八十萬神。永爲皇孫奉護焉。仍使大伴遠祖天忍日命帥來目部遠祖天槵津大來目。帶仗前駈。既而且降之閒。先驅還白。
新字:仍以天児屋命。太玉命。天鈿女命使配侍焉。因又勅曰。吾則起樹天津神籬。及天津磐境。当為吾孫奉斎矣。汝天児屋命太玉命二神。宜持天津神籬。降於葦原中国。亦為吾孫奉斎焉。惟爾二神共侍殿内能為防護。宜以吾高天原所御斎庭之穂。亦当御於吾児矣。宜太玉命率諸部神。供奉其職如天上儀。仍令諸神亦与陪従。復勅大物主神。宜領八十万神。永為皇孫奉護焉。仍使大伴遠祖天忍日命帥来目部遠祖天槵津大来目。帯仗前駈。既而且降之閒。先駆還白。
書き下し
仍りて天児屋命・太玉命・天鈿女命を以て配侍せしむ。因りて又勅して曰く、「吾は則ち天津神籬及び天津磐境を起こし樹てて、当に吾が孫の為に斎い奉るべし。汝天児屋命・太玉命の二神は、宜しく天津神籬を持ちて葦原中国に降り、亦吾が孫の為に斎い奉るべし。惟れ爾二神、共に殿の内に侍いて、能く防護を為せ。宜しく吾が高天原に御す所の斎庭の穂を以て、亦当に吾が児に御せしむべし。宜しく太玉命、諸部の神を率いて、其の職に供奉すること天上の儀の如くすべし」と。仍りて諸神をして亦与に陪従せしむ。復た大物主神に勅すらく、「宜しく八十万神を領いて、永く皇孫の為に護り奉るべし」と。仍りて大伴の遠祖天忍日命をして、来目部の遠祖天槵津大来目を帥いて、仗を帯びて前駈せしむ。既にして且に降らんとする間に、先駆還りて白す。
現代語訳
そこで天児屋命・太玉命・天鈿女命を皇孫に付き従わせた。そして重ねて勅して言われた。「私は天津神籬(あまつひもろぎ、神を迎える神聖な木の座)と天津磐境(あまついわさか、神を祭る岩の座)を立てて、わが孫のために斎き祭ろう。おまえたち天児屋命・太玉命の二神は、天津神籬を持って葦原中国へ降り、やはりわが孫のために斎き祭れ。おまえたち二神は、ともに御殿の内に仕えて、よく守りとなれ。私が高天原で召し上がる斎庭の稲穂を、わが子にも召し上がらせよ。太玉命は諸部の神々を率いて、その職を天上での儀式と同じように務めよ」と。そして神々にもともに付き従わせた。また大物主神に勅して言われた。「八十万の神々を率いて、永く皇孫をお護りせよ」と。そこで大伴氏の遠祖である天忍日命に、来目部の遠祖である天槵津大来目を率いさせ、武器を帯びて先払いをさせた。いよいよ降ろうとしているあいだに、先払いの者が戻ってきて報告した。
解説
関連する章句
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『古語拾遺』皇孫命と駈除平定天祖吾勝尊、高皇産霊神の女栲幡千千姫命を納れて、天津彦尊を生む。号して皇孫命と曰う。既にして天照大神・高皇産霊尊、皇孫を崇め養いて、降して豊葦原中国の主と為さんと欲す。仍りて経津主神・武甕槌神を遣わして、駈除し平定せしむ。
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『古語拾遺』安房社と宮門の祭阿波の忌部の居る所、便ち安房郡と名づく。天富命、即ち其の地に太玉命の社を立つ。今之を安房社と謂う。故に其の神戸に斎部氏有り。又手置帆負命の孫は矛竿を造る。其の裔、今分かれて讃岐国に在り。毎年、調庸の外に八百竿を貢ず。是れ其の事等の証なり。爰に皇天二祖の詔に仰ぎ従いて、神籬を建て樹つ。所謂る高皇産霊・神皇産霊・魂留産霊・生産霊・足産霊・大宮売神・事代主神・御膳神、櫛磐間戸神・豊磐間戸神、生島、坐摩なり。日臣命、来目部を帥いて宮門を衛護し、其の開闔を掌る。饒速日命、内物部を帥いて矛盾を造り備う。其の物既に備わりて、天富命、諸の斎部を率いて天璽の鏡・剣を捧げ持ち、正殿に安んじ奉り、并びに瓊玉を懸け、其の幣物を陳ねて、殿祭の祝詞す。次に宮門を祭る。然る後に物部乃ち矛盾を立て、大伴・来目、仗を建てて門を開き、四方の国を朝せしめて、以て天位の貴きを観しむ。
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『古語拾遺』真賢木と俳優其の物既に備わりて、天香山の五百箇の真賢木を掘り、上枝には玉を懸け、中枝には鏡を懸け、下枝には青和幣・白和幣を懸く。太玉命をして捧げ持ちて称讃せしめ、亦天児屋命をして相副えて祈祷せしむ。又天鈿女命をして真辟葛を以て鬘と為し、蘿葛を以て手繦と為し、竹葉・飫憩木の葉を以て手草と為し、手に鐸を着けたる矛を持たしめて、石窟戸の前に誓槽を覆せ、庭燎を挙げ、巧みに俳優を作し、相与に歌舞せしむ。
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『古語拾遺』猿田彦と蟹守乃ち其の胸乳を露わし、裳帯を臍の下に抑え下げて、向かい立ちて咲噱う。是の時、衢神問いて曰く、「汝何の故に然か為すや」と。天鈿女命反りて問いて曰く、「天孫の幸す所の路に居る者は誰ぞ」と。衢神対えて曰く、「天孫降りますべしと聞く。故に迎え奉りて相待つ。吾が名は是れ猿田彦大神なり」と。時に天鈿女命復た問いて曰く、「汝先に行くべきか、将た吾先に行くべきか」と。対えて曰く、「吾先に啓き行かん」と。天鈿女復た問いて曰く、「汝何処に到るべきか、将た天孫何処に到るべきか」と。対えて曰く、「天孫は当に筑紫の日向の高千穂の槵触の峰に到るべし。吾は伊勢の狭長田の五十鈴の川上に到るべし」と。因りて曰く、「吾を発顕せる者は汝なり。吾を送りて致すべし」と。天鈿女命還りて報す。天孫降臨、果たして皆期の如し。天鈿女命、乞うに随いて侍り送る。是を以て群神勅を奉じて天孫に陪従し、世を歴て相承け、各々其の職に供す。天祖彦火尊、海神の女豊玉姫命を娉りて、彦瀲尊を生む。誕育の日、海浜に室を立つ。時に掃守連の遠祖天忍人命、供奉して陪侍し、箒を作りて蟹を掃う。仍りて鋪設を掌り、遂に以て職と為す。号して蟹守と曰う。
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『古語拾遺』鳥見山の霊畤又天富命をして供作の諸氏を率いて、大幣を造作せしむること訖りて、天種子命をして天罪・国罪の事を解除せしむ。所謂る天罪は、上に既に説き訖る。国罪は、国中の人民の犯す所の罪なり。其の事、具さに中臣の祓詞に在り。爾に乃ち霊畤を鳥見山の中に立て、天富命幣を陳ね、祝詞して皇天を禋祀し、徧く群望を秩して、以て神祇の恩に答う。是を以て中臣・斎部の二氏、倶に祠祀の職を掌り、猨女君氏は神楽の事に供す。自余の諸氏も各々其の職有り。
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『古語拾遺』笠縫邑と五十鈴川仍りて倭の笠縫邑に就きて、殊に磯城の神籬を立て、天照大神及び草薙剣を遷し奉り、皇女豊鍬入姫命をして斎い奉らしむ。其の遷し祭る夕、宮人皆参りて、終夜宴楽す。歌いて曰く、「美夜比登能(みやひとの)、於保与須我良爾(おほよすがらに)、伊佐登保志(いさとほし)、由伎能与呂志茂(ゆきのよろしも)、於保与須我良爾(おほよすがらに)」と。又六年、八十万の群神を祭り、仍りて天社・国社及び神地・神戸を定む。始めて男の弭の調、女の手末の調を貢らしむ。今、神祇の祭に熊の皮・鹿の皮・角・布等を用うるは、此の縁なり。巻向玉城朝に洎びて、皇女倭姫命をして天照大神を斎い奉らしむ。仍りて神の教えに随いて、其の祠を伊勢国の五十鈴の川上に立て、因りて斎宮を興して倭姫命をして居らしむ。始め天上に在りて、預め幽契を結ぶ。衢神先に降る、深く以有るかな。此の御世、始めて弓矢・刀を以て神祇を祭り、更に神地・神戸を定む。又新羅の王子海檜槍来帰す。今但馬国出石郡に在りて大社と為るなり。纏向日代朝に至りて、
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