古語拾遺 / 所遺一
況復草薙神釼者。尤是天璽。自日本武尊愷旋之年。留在尾張國熱田社。外賊偸逃不能出境。神物靈驗以此可觀。然則奉幣之日。可同致敬。而久代闕如不修其禮。所遺一也。
新字:況復草薙神釼者。尤是天璽。自日本武尊愷旋之年。留在尾張国熱田社。外賊偸逃不能出境。神物霊験以此可観。然則奉幣之日。可同致敬。而久代闕如不修其礼。所遺一也。
書き下し
況んや復た草薙の神剣は、尤も是れ天璽なり。日本武尊愷旋の年より、尾張国熱田社に留在す。外賊偸み逃るるも境を出づること能わず。神物の霊験、此を以て観るべし。然らば則ち奉幣の日、同じく敬を致すべし。而るに久しく代々闕如して其の礼を修めず。遺す所の一なり。
現代語訳
まして草薙の神剣は、最も重い天の璽である。日本武尊が凱旋した年から、尾張国の熱田社に留め置かれている。外の賊が盗んで逃げようとしても、国境を出ることができなかった。神の物の霊験は、このことからも分かる。それならば幣を奉る日には、同じように敬いを尽くすべきである。ところが長く代々欠けたままで、その礼が行われていない。これが漏れの第一である。
解説
訴状の第一項は、草薙剣を祀る礼が欠けていることだった。三種の神器の一つでありながら、幣を奉る対象から漏れている。指摘の仕方が実務的で、まず重要性を確認し、次に事実を挙げ、そのうえで「然らば則ち」と本来あるべき扱いを述べ、最後に現状の欠落を「所遺一なり」と番号を打って締める。以下十一条まで同じ型が繰り返される。訴えを箇条にして番号を振るという形式そのものが、この書の後半を単なる愚痴から要求文書に変えている。何が漏れているかを数えられる形にすること——是正を求めるときの基本がここにある。
この章句が説くこと
所遺十一条草薙剣熱田社要求を箇条にする
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