古語拾遺 / 千座の置戸
爾乃二神倶請曰。勿復還幸。仍歸罪過於素戔鳴神。而科之以千座置戸。令拔首髮及手足爪以贖之。仍解除其罪逐降焉。
新字:爾乃二神倶請曰。勿復還幸。仍帰罪過於素戔鳴神。而科之以千座置戸。令抜首髪及手足爪以贖之。仍解除其罪逐降焉。
書き下し
爾に乃ち二神倶に請いて曰く、復た還り幸すこと勿かれ、と。仍りて罪過を素戔鳴神に帰し、之に科するに千座の置戸を以てし、首の髪及び手足の爪を抜かしめて以て之を贖わしむ。仍りて其の罪を解除して逐い降す。
現代語訳
そこで二柱の神がそろって請うて言った。どうか二度とお隠れになりませんように、と。そして罪と過ちを素戔鳴神に帰し、千座の置戸を科し、頭髪と手足の爪を抜かせて贖わせた。そのうえで、その罪を解き除いて追い降した。
解説
処分の手順が三段になっている。第一に、罪の所在をはっきりさせる。第二に、千座の置戸——山と積まれた贖いの品を科し、髪と爪を抜かせて贖わせる。第三に、罪を解除して追い降す。注目したいのは第三段である。贖わせたうえで、罪を解いている。負わせたまま追い出すのでも、うやむやに許すのでもない。清算を済ませてから縁を切る。大祓詞の「祓う」がこの物語の延長にあることも見えてくる。罪を消すのではなく、対価を取り、そのうえで解く。処分の設計として、この順序は今日の組織でもそのまま通じる。
この章句が説くこと
千座の置戸贖い罪を解除す処分の手順