古語拾遺 / 斎蔵
當此之時。帝之與神其際未遠。同殿共牀以此爲常。故神物官物亦未分別。宮内立藏。號日齋藏。令齋部氏永任其職。
新字:当此之時。帝之与神其際未遠。同殿共牀以此為常。故神物官物亦未分別。宮内立蔵。号日斎蔵。令斎部氏永任其職。
書き下し
此の時に当たりて、帝と神と、其の際未だ遠からず。殿を同じくし牀を共にすること、此れを以て常と為す。故に神物・官物も亦未だ分別せず。宮内に蔵を立て、号して斎蔵と曰う。斎部氏をして永く其の職に任ぜしむ。
現代語訳
この時代には、帝と神との隔たりはまだ遠くなかった。御殿を同じくし、床を共にするのが常であった。だから神の物と公の物とも、まだ区別されていなかった。宮の内に蔵を立て、これを斎蔵と名づけた。斎部氏を永くその職に任じた。
解説
会計の分離が、まだ起きていない時点の記録である。「神物・官物も亦未だ分別せず」——祭のための物と、政のための物が、同じ蔵に入っていた。この一文があるおかげで、後に内蔵が建てられ、さらに大蔵が建てられて三蔵になっていく過程が、分離の歴史として読める。組織が大きくなると、混ざっていた財布を分けざるを得なくなる。古語拾遺はその最初の状態を書き留めた。そして分けたあとに誰が出納を記録し、誰が検校するかまで続けて記す。祭祀の書と思われがちなこの本が、日本の会計史の基本史料として引かれる理由がここにある。
この章句が説くこと
斎蔵神物官物未だ分別せず同殿共牀会計の分離