古語拾遺 / 初度の鏡
於是從思兼神議。令石凝姥神鑄日像之鏡。初度所鑄少不合意。次度所鑄其狀美麗。儲備既畢。具如所謀。
新字:於是従思兼神議。令石凝姥神鋳日像之鏡。初度所鋳少不合意。次度所鋳其状美麗。儲備既畢。具如所謀。
書き下し
是に於て思兼神の議に従い、石凝姥神をして日像の鏡を鋳しむ。初度に鋳る所は少しく意に合わず。次度に鋳る所は其の状美麗なり。儲備既に畢り、具さに謀る所の如し。
現代語訳
そこで思兼神の議に従って、石凝姥神に日の像の鏡を鋳させた。最初に鋳たものは、少しばかり意にかなわなかった。二度目に鋳たものは、その姿が美しかった。準備はすべて整い、ことごとく謀ったとおりになった。
解説
わずか数十字だが、この書の性格がよく出た一段である。最初の鋳造は失敗した、と正直に書く。神話であれば一度で完璧に成ったと書いてもよいところを、初度は意に合わず、次度が美麗だったと記す。日本書紀の一書にも同じ話が伝わり、失敗した初度の鏡は紀伊国の日前神とされる。作ることには試行が要る、という当たり前のことが神代の記録に残っている。準備が整った状態を「具さに謀る所の如し」と書くのもいい。謀ったとおりになった、つまり計画があって、そのとおりに揃ったということである。
この章句が説くこと
初度の鏡次度美麗謀る所の如し試行