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古語拾遺 / 思兼神の議

爰思兼神深思遠慮議曰。宜令太玉神率諸部神造和幣。仍令石凝姥神取天香山銅以鑄日像之鏡。令長白羽神種麻以爲靑和幣。令天日鷲神。津咋見神穀木種殖之。以作白和幣。令天羽槌雄神織文布。令天棚機姬神織神衣。所謂和衣。令櫛明玉神作八坂瓊五百筒御統玉。令手置帆負。彥狹知二神以天御量。伐大峽小峽之材。而造瑞殿。兼作御笠及矛盾。令天目一筒神作雜刀斧及鐵鐸。

新字:爰思兼神深思遠慮議曰。宜令太玉神率諸部神造和幣。仍令石凝姥神取天香山銅以鋳日像之鏡。令長白羽神種麻以為靑和幣。令天日鷲神。津咋見神穀木種殖之。以作白和幣。令天羽槌雄神織文布。令天棚機姬神織神衣。所謂和衣。令櫛明玉神作八坂瓊五百筒御統玉。令手置帆負。彥狭知二神以天御量。伐大峡小峡之材。而造瑞殿。兼作御笠及矛盾。令天目一筒神作雑刀斧及鉄鐸。

書き下し

爰に思兼神、深く思い遠く慮りて議りて曰く、宜しく太玉神をして諸部の神を率いて和幣を造らしむべし、と。仍りて石凝姥神をして天香山の銅を取りて日像の鏡を鋳しめ、長白羽神をして麻を種えて青和幣と為さしめ、天日鷲神・津咋見神をして穀木を種殖せしめ、以て白和幣を作らしむ。天羽槌雄神をして文布を織らしめ、天棚機姫神をして神衣を織らしむ。所謂和衣なり。櫛明玉神をして八坂瓊の五百箇の御統玉を作らしめ、手置帆負・彦狭知の二神をして天の御量を以て大峡小峡の材を伐りて瑞殿を造らしめ、兼ねて御笠及び矛盾を作らしむ。天目一筒神をして雑の刀・斧及び鉄鐸を作らしむ。

現代語訳

そこで思兼神が深く思いをめぐらせて議って言うには、太玉神に諸部の神々を率いさせて幣を造らせるのがよい、と。そこで石凝姥神には天香山の銅を取って日の像の鏡を鋳させ、長白羽神には麻を植えて青い幣を作らせ、天日鷲神と津咋見神には穀の木を植えさせて白い幣を作らせた。天羽槌雄神には文様のある布を織らせ、天棚機姫神には神の衣を織らせた。これがいわゆる和衣である。櫛明玉神には八坂瓊の五百個の御統の玉を作らせ、手置帆負・彦狭知の二神には天の物差しで大小の谷の材木を伐って御殿を造らせ、あわせて笠と矛と盾を作らせた。天目一筒神にはさまざまな刀・斧と鉄の鐸を作らせた。

解説

会議の結論が、驚くほど具体的な作業割り当てになっている。鏡は石凝姥神、麻は長白羽神、穀は天日鷲神と津咋見神、布は天羽槌雄神、神衣は天棚機姫神、玉は櫛明玉神、建築は手置帆負と彦狭知、金属は天目一筒神。八つの職掌に、材料と成果物まで指定して配られる。祈るのではなく、まず作る。しかも一人に集中させず、それぞれの得意に応じて分ける。古語拾遺が斎部氏の書であることを思えば、この分業の記憶を残すことこそが著者の目的でもあった。危機に対して精神論を置かず、工程表を置いたところに、この神話の実務性がある。

この章句が説くこと

思兼神深く思い遠く慮る和幣分業

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