南洲翁遺訓 / 処世
南洲翁遺訓(処世)の名句を、現代語訳と実践の解説つきで。全43句。
西郷隆盛が語った教えを、旧庄内藩の赤沢経言・三矢藤太郎らが書き留め、明治二十三年(一八九〇)に刊行した語録です。全四十一条に追加二条。戊辰戦争で敵味方に分かれた庄内藩の元藩士たちが、降伏後の寛大な処置に感じ入って西郷のもとへ通い、その言葉を集めたという成り立ちを持ちます。前半は統治論です。「官は其の人を選びて之れを授け、功有る者には俸禄を以て賞し」(第一条)と功労と適性を切り離し、「入るを量りて出るを制する」(第十四条)と財政の原則を一つに絞り、「租税を薄くして民を裕にするは、即ち国力を養成する也」(第十三条)と説きます。後半は修養論です。「敬天愛人」(第二十一条)、「人を相手にせず、天を相手にせよ」(第二十五条)、「命ちもいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人は、仕抹に困るもの也」(第三十条)。また第十一条では「実に文明ならば、未開の国に対しなば、慈愛を本とし、懇懇説諭して開明に導く可きに、左は無くして未開蒙昧の国に対する程むごく残忍の事を致し己れを利するは野蛮ぢや」と、当時の西洋列強を正面から批判しています。西郷が終生座右に置いた『言志四録』とあわせて読むと、系譜がよく見えます。末尾の追加第二条では『春秋左氏伝』と『孫子』を名指しで薦めており、いずれも師導に収めています。本文は日本語版ウィキソースのものを、国立国会図書館の公有版二種(大正十五年『西郷南洲翁遺訓及遺文』山田準編/昭和二年 岩波文庫『西郷南洲遺訓』山田済斎編)と照合したうえで、全四十三条を収めています。