仏遺教経 / 仏教
仏遺教経(仏教)の名句を、現代語訳と実践の解説つきで。全24句。
釈尊が沙羅双樹のあいだで入滅する直前、真夜中の静寂のなかで弟子たちに遺した最後の教誡を伝える経です。正しくは『仏垂般涅槃略説教誡経』といい、姚秦の鳩摩羅什が漢訳しました。全体で三千字に満たない短い経ですが、禅宗では四十二章経・潙山警策と合わせて仏祖三経と呼ばれ、日常の指針として読み継がれてきました。冒頭で釈尊はまず「私が世を去った後は戒を師とせよ、これこそがおまえたちの大師である」と告げ、以下、持戒・五根の制御・食・睡眠・忍・憍慢・諂曲と、身近なところから順に説いていきます。中心にあるのが八大人覚——少欲・知足・遠離・精進・不忘念・禅定・智慧・不戯論の八つで、少欲から始まって智慧に至る階段として組まれています。「これを一処に制すれば、事として辦ぜざる無し」(心を一点に集めれば成らない事はない)、「不知足の者は、富めりと雖も貧し。知足の人は、貧しと雖も富めり」、「小水長く流るれば、則ち能く石を穿つ」など、宗派を越えて引かれる句が並びます。終盤の「我は良医の如く、病を知りて薬を説く。服すると服せざるとは、医の咎に非ざるなり」は、教える側の責任の範囲を示した言葉として、そのまま人を育てる場面に当たります。師導では維基文庫の全文(簡体字混入率〇・〇〇%)を底本に、全二十二段から二十四の章句を収めました。底本の八割九分にあたり、ほぼ全文が章句になっています。読点は日本式に改めています。