仏遺教経 / 慚恥の服
汝等比丘、晝則勤心修習善法、無令失時、初夜後夜、亦勿有廢。中夜誦經、以自消息、無以睡眠因緣、令一生空過、無所得也。當念無常之火、燒諸世間、早求自度、勿睡眠也。諸煩惱賊常伺殺人、甚於怨家、安可睡眠、不自警寤?煩惱毒蛇睡在汝心、譬如黑蚖在汝室睡、當以持戒之鉤早摒除之。睡蛇既出、乃可安眠、不出而眠、是無慚人!慚恥之服、於諸莊嚴、最為第一。慚如鐵鉤、能制人非法、是故常當慚恥、無得暫替。若離慚恥、則失諸功德。有愧之人、則有善法、若無愧者、與諸禽獸無相異也。
新字:汝等比丘、昼則勤心修習善法、無令失時、初夜後夜、亦勿有廃。中夜誦経、以自消息、無以睡眠因縁、令一生空過、無所得也。当念無常之火、焼諸世間、早求自度、勿睡眠也。諸煩悩賊常伺殺人、甚於怨家、安可睡眠、不自警寤?煩悩毒蛇睡在汝心、譬如黒蚖在汝室睡、当以持戒之鉤早摒除之。睡蛇既出、乃可安眠、不出而眠、是無慚人!慚恥之服、於諸荘厳、最為第一。慚如鉄鉤、能制人非法、是故常当慚恥、無得暫替。若離慚恥、則失諸功徳。有愧之人、則有善法、若無愧者、与諸禽獣無相異也。
書き下し
汝等比丘、昼は則ち勤めて心に善法を修習し、時を失わしむること無かれ。初夜・後夜も、亦た廃すること勿かれ。中夜には経を誦し、以て自ら消息せよ。睡眠の因縁を以て、一生をして空しく過ぎ、得る所無からしむること無かれ。当に無常の火の、諸の世間を焼くを念い、早く自ら度することを求めて、睡眠すること勿かれ。(中略)慚恥の服は、諸の荘厳に於て、最も第一と為す。慚は鉄鉤の如く、能く人の非法を制す。是の故に常に当に慚恥すべく、暫くも替うることを得ること無かれ。若し慚恥を離れなば、則ち諸の功徳を失う。愧有るの人は、則ち善法有り。若し愧無くんば、諸の禽獣と相い異なること無きなり。
現代語訳
比丘たちよ、昼は勤めて善き法を修め、時を無駄にしてはならない。初夜も後夜も怠るな。真夜中には経を誦えて自らを整えよ。睡眠のせいで一生を空しく過ごし、何も得られないままにしてはならない。無常の火が世の中を焼いていることを思い、早く自ら救われることを求めて、眠りこけてはならない。(中略)恥じる心という衣は、あらゆる飾りのなかで第一である。恥は鉄の鉤のように、人の非法を制することができる。だから常に恥じる心を持ち、片時も取り替えてはならない。恥じる心を離れれば、あらゆる功徳を失う。恥じる心のある人には善き法があり、恥じる心がなければ、鳥や獣と異なるところがない。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『仏遺教経』憍慢汝等比丘、当に自ら頭を摩すべし。已に飾好を捨て、壊色の衣を著け、応器を執持し、乞うを以て自活す。自ら是くの如きを見よ。若し憍慢を起こさば、当に疾やかにこれを滅すべし。憍慢を増長するは、尚お世俗の白衣の宜しき所に非ず。何に況んや出家入道の人、解脱の為の故に、自ら其の身を降して乞を行ずるをや。
-
『仏遺教経』忍の徳汝等比丘、若し人有りて来たりて節節に支解するも、当に自ら心を摂めて、瞋恨せしむること無かるべし。亦た当に口を護りて、悪言を出すこと勿かるべし。若し恚心を縦にせば、即ち自ら道を妨げ、功徳の利を失う。忍の徳たる、持戒苦行も及ぶ能わざる所なり。能く忍を行ずる者は、乃ち名づけて有力の大人と為すべし。若し其れ能く歓喜して悪罵の毒を忍受すること甘露を飲むが如くならざれば、入道の智慧人と名づけざるなり。所以は何ん。瞋恚の害は、則ち諸の善法を破り、好き名聞を壊り、今世後世、人喜び見ず。当に知るべし、瞋心は猛火よりも甚だし。常に当に防護して、入るを得しむること無かるべし。功徳を劫かす賊は、瞋恚に過ぐる無し。
-
『仏遺教経』これを一処に制すれば此の五根は、心を其の主と為す。是の故に汝等、当に好く心を制すべし。心の畏るべきは、毒蛇・悪獣・怨賊よりも甚だし。大火の越逸するも、未だ喩うるに足らず。譬えば人有りて、手に蜜器を執り、動転軽躁にして、但だ蜜を観て、深き阬を見ざるが如し。譬えば狂象の鉤無く、猿猴の樹を得て、騰躍踔躑して、禁制すべきこと難きが如し。当に急にこれを挫き、放逸ならしむること無かるべし。此の心を縦にする者は、人の善事を喪う。これを一処に制すれば、事として辦ぜざる無し。是の故に比丘、当に勤めて精進し、汝が心を折伏すべし。
-
『仏遺教経』不忘念汝等比丘、善知識を求め、善護助を求むるは、不忘念に如くは無し。若し不忘念有る者は、諸の煩悩の賊は則ち入る能わず。是の故に汝等、常に当に念を摂めて心に在らしむべし。若し念を失う者は、則ち諸の功徳を失う。若し念力堅強ならば、五欲の賊中に入ると雖も、害せらるる所と為らず。譬えば鎧を著けて陣に入れば、則ち畏るる所無きが如し。是を不忘念と名づく。
-
『仏遺教経』是れ我が最後の教誨なり汝等比丘、常に当に一心にして、勤めて出道を求むべし。一切世間の動・不動の法は、皆な是れ敗壊不安の相なり。汝等且く止めよ、復た語ることを得ること勿かれ。時将に過ぎんと欲す。我れ滅度せんと欲す。是れ我が最後の所教誨なり。
-
『仏遺教経』五根を制す汝等比丘、已に能く戒に住せば、当に五根を制して、放逸ならしめ、五欲に入らしむること勿かるべし。譬えば牧牛の人の、杖を執りてこれを視、縦逸して人の苗稼を犯さしめざるが如し。若し五根を縦にせば、唯だ五欲の将に涯畔無からんとするのみに非ず、制すべからざるなり。亦た悪馬の、轡を以て制せざれば、将に当に人を牽きて阬埳に墜とすがごとし。劫賊に被るが如きは、苦は一世に止まる。五根の賊禍は、殃い累世に及ぶ。害を為すこと甚だ重し、慎まざるべからず。