「うちの幹部は、イエスマンばかりだ」。

会議で意見を求めても、誰も反対しない。提案は通るが、あとから現場で問題が噴き出す。「なぜ言わなかったのか」と聞くと、「言える雰囲気ではなかった」と返ってくる。経営者や管理職から、よく聞く悩みです。

ただ、この言葉にも問題があります。主語が部下になっていることです。

言い換えてみると、はっきりします。「部下がイエスマンばかりだ」を「私の前では、みんなイエスとしか言わない」と言い直したとき、問いが変わります。なぜ、私の前でだけ、そうなるのか。

同じ部下が、同僚どうしの飲み会では率直に不満を言っている。取引先には「それは無理です」と言えている。イエスマンは性格ではなく、特定の相手の前でだけ起きる現象です。そして、その相手が自分であるなら、原因の半分以上は自分の側にあります。

東洋古典には、この問題を扱った話が驚くほど多く残っています。君主が臣下の本音を聞けなくなることは、国が滅びるいちばん確かな前兆だったからです。唐の太宗は「最近、朝臣がまったく政治を論じないのはなぜだ」と家臣に尋ね、斉の宰相は、妻と妾と客がそろって自分を褒めた理由を一晩考えました。

この記事では、「本音が上がってこない」という状態を七つの原因に切り分け、それぞれに東洋古典が何を書いているかを読んでいきます。原文(白文)・書き下し文・現代語訳と解説つきです。

先に一つ、読み方の提案をしておきます。七つを全部やろうとしないでください。 読みながら「これは自分だ」と思うところが、一つか二つあるはずです。そこだけで十分です。

まず、切り分ける ― 七つの原因

先に、七つを並べておきます。

一、褒め言葉の「理由」を疑っていない。 周りが褒めるのを、評価だと思っている。
二、顔が怖い。 本人にその気がなくても、前に立つと言葉が出なくなる。
三、言ってきた人の「出来」を詰めている。 意見の中身より、言い方や根拠の甘さを問題にする。
四、耳の痛い言葉を、攻撃と受け取る。 強い言葉ほど、悪口に聞こえる。
五、好みを見せすぎている。 何を言えば喜ぶかが、周りに全部読まれている。
六、入口を閉じている。 聞きたくない話が届く経路を、自分で塞いでいる。
七、黙る人を、一種類だと思っている。 黙る理由は人によって違う。

七つとも、部下の行動ではなく、上に立つ側の行動です。ここがこの記事のいちばん大事なところなので、先に書いておきます。

では、一つずつ見ていきます。

一、褒め言葉の「理由」を疑っていない

最初は、いちばん有名な話から入ります。『戦国策』に収められた、斉の宰相・鄒忌(すうき)の話です。

鄒忌は背が高く、容姿の整った人でした。ある朝、鏡を見ながら妻に尋ねます。「私と、城北の徐公と、どちらが美しいか」。徐公は斉で評判の美男子です。妻は「あなたのほうがずっと美しい」と答える。妾に聞いても同じ。訪ねてきた客に聞いても同じでした。

ところが翌日、本物の徐公がやってきた。じっくり見比べると、どう見ても自分のほうが劣っている。鏡を見れば、なおさらです。その夜、床の中で鄒忌は考えました。

【白文】暮,寢而思之曰:「吾妻之美我者,私我也;妾之美我者,畏我也;客之美我者,欲有求於我也。」
【書き下し】暮に、寢ねて之を思ひて曰く、「吾が妻の我を美とするは、私するなり。妾の我を美とするは、我を畏るるなり。客の我を美とするは、我に求むる有らんと欲すればなり。」

妻が私を美しいと言ったのは、私をひいきしているから。妾が私を美しいと言ったのは、私を恐れているから。客が私を美しいと言ったのは、私に頼みごとがあるから

三人とも嘘をついたわけではありません。ただ、三人とも本当のことを言う理由がなかった

鄒忌はこれを、そのまま主君の斉の威王に持っていきます。

【書き下し】今齊は地方千里、百二十城、宮婦左右、私せざる莫し。朝廷の臣、畏れざる莫し。四境の內、求むる有らざる莫し。此に由りて之を觀れば、王の蔽はるること甚だし。」

いま斉は千里四方、百二十の城がある。後宮の女性で王をひいきしない者はいない。朝廷の臣下で王を恐れない者はいない。国中で王に何かを求めない者はいない。これで考えれば、王の目はひどく塞がれています。

組織の上に立つと、この三つが同時に起きます。身内はひいきし、部下は恐れ、取引先は何かを求めている。立場が上がるほど、自分に届く評価は、三重に歪んでいきます。

最初の処方は、ここです。褒め言葉を受け取ったら、その中身より先に、その人が本当のことを言う理由を持っているかを考える。ひいき、恐れ、頼みごと。どれか一つでも当てはまるなら、その褒め言葉は評価ではありません。

出典:戦国策 鄒忌脩八尺有餘

二、顔が怖い

唐の太宗は、自分の顔が怖いことを知っていた皇帝です。

【書き下し】又た比(このごろ)人の来たりて事を奏する者を見るに、多く怖懾(ふしょう)有り、言語は次第を失うに致る。尋常の奏事すら、情なお此くの如し。況んや諫諍せんと欲せば、必ず当に逆鱗を犯すを畏るべし。所以に諫むる者有る毎に、縦(たと)い朕の心に合わずとも、朕も亦た以て忤(さか)らうと為さず。若し即ち嗔責(しんせき)せば、深く恐る、人は戦懼を懐き、豈に肯えて更に言わんや」と。

近ごろ、奏上に来る者を見ると、多くが怯えて、言葉の順序まで失っている。ふつうの報告でさえこうなのだ。まして諫めようとする者は、逆鱗に触れるのを恐れているだろう。 だから、諫める者がいれば、たとえ私の考えに合わなくても、逆らったとは思わない。もしその場で叱りつければ、人は恐れて、二度と口を開かなくなる——。

太宗は、自分が怒っていないときでも、相手が怯えていることに気づいていました。威圧は、本人の意図とは関係なく、立場から出ます。

同じことを、もっと短く言ったのが、斉の晏子(あんし)です。『説苑』正諫篇にあります。

【書き下し】晏子景公に復して曰わく、「朝居厳なるか」と。公曰わく、「朝居厳ならば、則ち国家に何の害かあらんや」と。晏子対えて曰わく、「朝居厳なれば、則ち下言無し。下言無ければ、則ち上聞く無し。下言無きは之を喑と謂い、上聞く無きは之を聾と謂う。

晏子は主君の景公に尋ねます。「朝廷の空気が、厳しすぎはしませんか」。景公は「厳しくて何が悪い」と答える。晏子は言います。朝廷が厳しすぎれば、下は物を言わなくなる。下が物を言わなければ、上には何も聞こえなくなる。下が言わない状態を「喑」、上が聞かない状態を「聾」と呼ぶ。口がきけず、耳が聞こえない、という意味の字です。

下が黙るのは、下の病気ではありません。上下そろって、口と耳を同時に失っている状態です。

出典:貞観政要 求諫説苑 正諫

三、言ってきた人の「出来」を詰めている

三つ目は、自覚しにくい原因です。

貞観十八年、太宗は重臣たちを集めて、はっきりこう言いました。「臣下は帝王に向かうと、たいてい従うばかりで逆らわず、甘い言葉で機嫌を取る。今日は隠さず、順番に私の過ちを言え」。

【書き下し】長孫無忌・唐倹等は皆な曰く、「陛下の聖化は太平を致す。臣の之を観るを以てするに、其の失を見ず」と。

重臣たちの答えは、「陛下の過ちは見当たりません」。過ちを言えと命じられて、イエスマンの答えが返ってきたわけです。

ところが一人だけ、黄門侍郎の劉洎(りゅうき)が、別のことを言いました。

【書き下し】然れども頃(このごろ)人の書を上りて、辞理の称(かな)わざる者有り。或いは面に対して窮詰し、慚じて退かざる無し。恐らくは言う者を奨進するに非ず」と。

近ごろ、上書してきた者の言葉や理屈が的を射ていないと、陛下は面と向かって問い詰められます。恥じ入って引き下がらない者はいません。これでは、意見を言う者を励ますことになりません。

太宗は「そのとおりだ。改めよう」と答えました。

ここが大事なところです。太宗は、意見を言ってきた人を罰していたわけではありません。ただ、論理の甘さを指摘していただけです。上に立つ人の多くは、これを「指導」だと思っています。しかし言う側から見れば、意見を出すたびに、自分の出来の悪さを人前で確認されることになる。

だから、人は完璧に準備できたことしか言わなくなります。そして、本当に聞くべき話——まだ根拠は弱いが、何かがおかしいという違和感——は、完璧に準備できないので、上がってこなくなるのです。

出典:貞観政要 納諫

四、耳の痛い言葉を、攻撃と受け取る

四つ目は、言葉の強さの問題です。

貞観八年、地方の役人・皇甫徳参(こうほとくさん)が上書して、太宗の意に逆らいました。太宗はこれを自分への誹謗だと受け取ります。そこで、魏徴(ぎちょう)が言いました。

【書き下し】古より書を上るは、率ね多く激切なり。若し激切ならずんば、則ち人主の心を起こす能わず。激切なれば即ち訕謗に似たり。惟だ陛下、其の可否を詳らかにせよ」と。

昔から、上書というものはたいてい激しいものです。激しくなければ、君主の心を動かせないからです。そして激しければ、悪口に似てきます。 どうか、中身が正しいかどうかでお考えください。

太宗は「あなたでなければ、こうは言えない」と言い、皇甫徳参に絹二十段を与えました。

言う側は、何度も迷ったうえで、やっと言いに来ています。だから言葉が強くなる。強い言葉は、勇気の量であって、敵意の量ではありません。 そこを取り違えると、いちばん思い詰めていた人から順に、口を閉じていきます。

太宗はのちに、耳の痛い意見を奉った臣下に、薬を贈ってこう言っています。

【書き下し】卿は薬石の言を進む。故に薬石を以て相報ゆ」と。

あなたは薬のような言葉をくれた。だから薬で報いよう。苦い言葉に、報いるものを用意しておく。 言った人が損をしない形を、目に見えるように示したわけです。

出典:貞観政要 納諫貞観政要 納諫

五、好みを見せすぎている

五つ目は、韓非子(かんぴし)が冷たく指摘した原因です。

【書き下し】人主賢を好めば、則ち群臣行いを飾り以て君の欲を要う。

君主が賢い人を好むと見せれば、臣下は行いを飾って、君主の好みに合わせようとする。韓非子は例を挙げます。

【書き下し】楚の靈王、細腰を好みて、國中に餓人多し。

楚の霊王が細い腰を好んだので、国中に飢えた人があふれた。王に気に入られようと、みなが食事を減らしたからです。

そして結論です。

【書き下し】好を去り、悪を去れば、群臣、素を見す。

好みを捨て、嫌いを捨てれば、臣下は素顔を見せる。

社長が数字の話を好めば、報告は数字で飾られる。社長が前向きな話を好めば、悪い知らせは「課題」と言い換えられる。社長が特定の人を褒めれば、みなその人の言い方を真似る。部下は社長の好みを、社長本人より正確に知っています。 そして、その好みに合う話だけを持ってくる。

これは部下がずるいのではありません。好みが見えている相手に、好まれない話を持っていくのは、誰にとっても割に合わないのです。

出典:韓非子 二柄第七韓非子 二柄第七韓非子 二柄第七

六、入口を閉じている

六つ目は、話が届く経路の問題です。

『淮南子』に、斉の宰相・靖郭君(せいかくくん)の話があります。靖郭君は自分の領地・薛(せつ)に城を築こうとしていました。客人たちの多くが止めましたが、聞き入れません。そして、取次役にこう命じました。

【書き下し】靖郭君 謁者に謂いて曰く「賓の爲に言を通ずること無かれ」と。

客のために、話を取り次ぐな。

反対意見を聞かないために、入口そのものを閉じたわけです。そこへ一人の客が「三語だけ言わせてほしい。三語を超えたら煮殺されてもいい」と申し入れ、会うことを許されます。客は「海大魚(うみのおおうお)」とだけ言って、帰ろうとした。気になった靖郭君が引き止めて続きを聞くと、客は言いました。海の大魚は網でも釣り針でも捕まらないが、水から打ち上げられれば、螻(けら)や蟻にさえ好きにされる。斉は、あなたにとっての水です。 斉を失えば、薛の城がいくら厚くても意味がない——。靖郭君は築城をやめました。

この話の教訓は、客の話術の見事さとして語られることが多いのですが、イエスマンの問題として読むと、焦点は靖郭君の命令のほうにあります。反対意見が届く入口を、上が自分で閉じていた。三語で煮殺される覚悟をした客が一人いなければ、靖郭君は城を築き、国を失っていたかもしれません。

入口を閉じるのは、上本人とは限りません。韓非子は、君主の周りで先回りする側近を、国を滅ぼす八つの原因の一つに数えています。

【書き下し】人主の未だ命ぜずして唯唯、未だ使わずして諾諾、意に先だち旨を承け

君主が命じる前から「はいはい」と言い、使う前から「かしこまりました」と引き受け、意向を先回りして汲み取る者たち。いわゆる「唯々諾々」の出典です。

秘書、側近、古参の幹部。上の意向を先回りして汲む人が周りにいると、上の気に入らない話は、上に届く前に止まります。 本人は入口を閉じたつもりがなくても、入口の手前に門番が立っているのです。

出典:淮南子 人間訓韓非子 八姦第九

七、黙る人を、一種類だと思っている

最後は、処方を選ぶための原因です。

貞観十五年、太宗は魏徴に尋ねました。「近ごろ、朝臣がまったく政治を論じない。なぜだ」。魏徴の答えは、黙る理由を三つに分けていました。

【書き下し】懦弱(だじゃく)の人は、忠直を懐きて言う能わず。疎遠の人は、信ぜられざるを恐れて言うを得ず。禄を懐(おも)うの人は、身に不便なるを慮りて敢えて言わず。所以に相与に緘黙(かんもく)し、俯仰して日を過ごす」と。

気の弱い人は、忠実な思いを抱きながら言えない。疎遠な人は、信頼されていないことを恐れて言えない。禄を惜しむ人は、自分に不利になることを考えて、あえて言わない。 だから互いに黙り込み、うつむいたり見上げたりしながら日を過ごしている——。

三種類の沈黙は、処方がまったく違います。

  • 気の弱い人には、言いやすい場を用意する。一対一で聞く、書いて出してもらう。
  • 疎遠な人には、まず関係をつくる。信頼されていないと思っている人に「なんでも言ってくれ」と言っても、届きません。
  • 禄を惜しむ人には、言っても損をしない証拠を見せる。言った人が報われた実例を、先に作る。

「うちはみんな黙っている」とひとまとめにした時点で、処方は外れます。全員に同じ「遠慮なく言ってくれ」を投げても、動くのは三種類のうちの誰でもありません。

この段は、『貞観政要』の名言を集めた記事でも取り上げました。太宗の答え——諫めることは、煮えたぎる釜に飛び込むのと変わらない——まで含めて、そちらで詳しく読んでいます。

出典:貞観政要 求諫

七つのうち、どれを選ぶか

もう一度、七つを並べます。

一、褒め言葉の「理由」を疑っていない ——ひいき・恐れ・頼みごとのどれかがないか。
二、顔が怖い ——自分が怒っていなくても、相手は怯えている。
三、言ってきた人の「出来」を詰めている ——指導のつもりが、発言の罰になっている。
四、耳の痛い言葉を、攻撃と受け取る ——強い言葉は、勇気の量。
五、好みを見せすぎている ——部下は、あなたの好みを知り尽くしている。
六、入口を閉じている ——自分で閉じたか、門番が閉じたか。
七、黙る人を、一種類だと思っている ——気の弱い人、疎遠な人、損を恐れる人。

全部やろうとしないでください。 自分に当てはまりそうなものを一つ選び、まずそれだけを一か月続けてみる。三番なら「意見を持ってきた人に、最初の一言で欠点を指摘しない」。五番なら「会議で、自分の意見を最後に言う」。それだけで、上がってくる話の質は変わります。

そして、見てのとおり、七つとも部下の行動ではありません。 部下を変える方法は、一つも書かれていない。古典がこの問題について書いているのは、すべて上に立つ側が何をやめるかです。

太宗は、このことを自分ひとりの問題にしませんでした。

【書き下し】公等も亦た須らく人の諫語を受くべし。豈に人の言、己が意に同じからざるを以て、便ち即ち短を護りて納れざるを得んや。若し諫を受くる能わずんば、安(いず)くんぞ能く人を諫めんや」と。

諸君もまた、人の諫言を受け入れねばならない。自分の考えと違うからといって、短所をかばって聞き入れないでよいものか。自分が諫言を受け入れられない者が、どうして人を諫められようか。

社長が聞く耳を持っても、その下の部長が部下の意見を詰めていれば、本音は部長のところで止まります。イエスマンは、階層ごとに作られます。 だから七つの点検は、社長だけのものではありません。部下を一人でも持つ人なら、全員に当てはまります。

出典:貞観政要 求諫

最後に ― 門庭、市の若し

最後に、鄒忌の話の続きを読んでおきます。

「王の目はひどく塞がれている」と言われた威王は、どうしたか。

【書き下し】王曰く、「善し。」乃ち令を下して曰く、「群臣吏民、能く面ら寡人の過ちを刺す者は、上賞を受けん。書を上りて寡人を諫むる者は、中賞を受けん。能く市朝に謗議して、寡人の耳に聞かしむる者は、下賞を受けん。」令初めて下るや、群臣諫めを進め、門庭市の若し。數月の後、時時にして間ま進む。期年の後、言はんと欲すと雖も、進むべき無し。燕・趙・韓・魏之を聞き、皆な齊に朝す。此れ所謂朝廷に戰ひ勝つといふなり。

王は「よし」と言い、命令を出しました。面と向かって私の過ちを指摘した者には上の賞を与える。書面で諫めた者には中の賞。街や朝廷で私を批判し、それが私の耳に届いた者には下の賞。

命令が出た当初、諫めに来る者が殺到し、宮殿の門と庭は市場のようなにぎわいになりました。数か月後には、ときどき思い出したように来る程度になった。そして一年後には、言いたくても、言うべきことがなくなった。 それを聞いた燕・趙・韓・魏の国々は、みな斉に朝見した。これを「朝廷で戦に勝つ」と言う——。

ここには、二つのことが書かれています。

一つは、本音は仕組みで引き出せるということ。威王は「遠慮なく言ってくれ」と頼んだのではありません。言った人が得をする仕組みを、三段階に分けて作りました。面と向かって言うのがいちばん勇気が要るから、いちばん報いる。直接言えない人のために、書面と、間接的な批判の経路まで用意しています。

もう一つは、本音が上がってくる状態は、長くは続かないということ。一年後に諫める者がいなくなったのは、言うべき過ちが減ったから、と読むのが自然でしょう。しかしそれは同時に、仕組みを止めれば、また元に戻るということでもあります。

晏子は景公に、こうも言っていました。

【書き下し】固より受けて用いざる有り、悪んぞ距ぎて入れざる者有らんや」と。

意見を受け取って、採用しないことはあってよい。しかし、受け取ること自体を拒んでよいはずがない。

全部を採用する必要はありません。聞くことと、従うことは別です。イエスマンがいなくなる組織とは、上が何でも聞き入れる組織ではなく、上が何でも聞く組織です。

出典:戦国策 鄒忌脩八尺有餘説苑 正諫


この記事で引いた古典は、いずれも師導に原文・書き下し文・現代語訳と解説つきで収録しています。それぞれの書を通して読むと、諫言と聞き方の話がほかにもたくさん見つかります。

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