山鹿語類 / 士道附錄・先生自警
吾元不玩好器物。故武之器物之外。其制其用太疏也。凡玩好者喪志也。太疏者不及也。器物亦人間之應用也。吾生質元太簡。而乏禮容。衣服居宅飮食皆過儉。是居簡而行簡。豈不思究盡禮容其中節而企望乎。吾甚喩利害。故所言涉利口。所行貴捷徑。切欲立己。而不思立人。吾薄德如此。而欲得志。是傷人貽辱。天地之罪人也。天命不與。亦不宜乎。何不思。
新字:吾元不玩好器物。故武之器物之外。其制其用太疏也。凡玩好者喪志也。太疏者不及也。器物亦人間之応用也。吾生質元太簡。而乏礼容。衣服居宅飲食皆過倹。是居簡而行簡。豈不思究尽礼容其中節而企望乎。吾甚喩利害。故所言渉利口。所行貴捷径。切欲立己。而不思立人。吾薄徳如此。而欲得志。是傷人貽辱。天地之罪人也。天命不与。亦不宜乎。何不思。
書き下し
吾元器物を玩好せず。故に武の器物の外は、其の制其の用太だ疏なり。凡そ玩好する者は志を喪ふなり。太だ疏なる者は及ばざるなり。器物も亦人間の応用なり。吾が生質元太だ簡にして、礼容に乏し。衣服居宅飲食皆倹に過ぐ。是れ簡に居て簡を行ふなり。豈に礼容を究め尽くし、其の節に中らんことを思ひて企望せざらんや。吾甚だ利害に喩る。故に言ふ所利口に渉り、行ふ所捷径を貴ぶ。切に己を立てんと欲して、人を立つることを思はず。吾が薄徳此の如くにして、志を得んと欲す。是れ人を傷り辱めを貽す、天地の罪人なり。天命与せざるも、亦宜ならずや。何ぞ思はざる。
現代語訳
私はもともと器物をもてあそび好むことがない。だから武具のほかは、その作りや使い方がたいへんおろそかである。およそ物をもてあそび好む者は志を失う。しかし、あまりにおろそかなのは及ばないということである。器物もまた人の世で用いるものなのだ。私は生まれつき大まかで、礼にかなった振る舞いに乏しい。衣服・住まい・飲食はみな倹約に過ぎる。これは大まかな心のままで大まかなことを行う(簡に居て簡を行ふ)ものである。どうして礼の形を究め尽くし、節度にかなうことを思って目指さずにいられようか。私は利害にたいへん敏い。だから言うことは口先の巧みさに流れ、行うことは近道を尊ぶ。ひたすら自分を立てようとして、人を立てることを思わない。私はこれほど徳が薄いのに、志を遂げようとしている。これは人を傷つけ恥を残すもので、天地の罪人である。天命が味方しないのも当然ではないか。どうして思わずにいられようか。
解説
この章句が説くこと
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