山鹿語類 / 士道・正一日之用
故先夙興而潔身。養省認觀。出席謁諸士。待來賓。或見射御馬。速飮食。不饗應招請。而食時有來客。則不改踈食。共簞醪。徹則盥漱。正容貌。莊威儀。無用事。則握釼控弓。或鐵炮。或長槍。各游其藝。矯骨節。正進退。招先覺。到彼許。而更不可忘。久懈。則手足不自由。骨節不相應。身不馴。躰不輕。而業闕。古人以運甕致力。其勵志勤力。可併察也。猶暇。則閱書論講兵法武義。窮其事物之理。詳其器用之制。唯宗聖人之所言矣。日既西。則暮食復禮。復朝食之禮也朝暮之食。貴疏而速。日云昏。早立燭。而辨物色。去嫌疑。有事則進恪之。無事則靜安氣。凡大丈夫燕居之間。其愼獨如此。則內不疚。不以明暗廢禮。心于廣。躰于胖。氣于專一。志有所定向。而放僻邪侈之意無所發。是燕居之戒也。
新字:故先夙興而潔身。養省認観。出席謁諸士。待来賓。或見射御馬。速飲食。不饗応招請。而食時有来客。則不改疎食。共箪醪。徹則盥漱。正容貌。荘威儀。無用事。則握釼控弓。或鉄炮。或長槍。各游其芸。矯骨節。正進退。招先覚。到彼許。而更不可忘。久懈。則手足不自由。骨節不相応。身不馴。体不軽。而業闕。古人以運甕致力。其励志勤力。可併察也。猶暇。則閲書論講兵法武義。窮其事物之理。詳其器用之制。唯宗聖人之所言矣。日既西。則暮食復礼。復朝食之礼也朝暮之食。貴疏而速。日云昏。早立燭。而弁物色。去嫌疑。有事則進恪之。無事則静安気。凡大丈夫燕居之間。其慎独如此。則内不疚。不以明暗廃礼。心于広。体于胖。気于専一。志有所定向。而放僻邪侈之意無所発。是燕居之戒也。
書き下し
故に先づ夙に興きて身を潔くし、省認観を養ひ、席に出でて諸士に謁し、来賓を待つ。或は射御馬を見、速やかに飲食し、饗応招請せず。而して食時に来客有れば、則ち疎食を改めず、簞醪を共にす。徹すれば則ち盥漱し、容貌を正し、威儀を荘にす。用事無ければ則ち剣を握り弓を控き、或は鉄炮、或は長槍、各其の芸に游び、骨節を矯め、進退を正し、先覚を招き、彼の許に到りて、更に忘るべからず。久しく懈れば則ち手足自由ならず、骨節相応ぜず、身馴れず、体軽からずして、業闕く。古人甕を運びて力を致す。其の志を励まし力を勤むる、併せ察すべきなり。猶暇あれば則ち書を閲し兵法武義を論講し、其の事物の理を窮め、其の器用の制を詳にし、唯聖人の言ふ所を宗とす。日既に西すれば則ち暮食して礼を復す。朝食の礼を復するなり。朝暮の食は疏にして速やかなるを貴ぶ。日云に昏るれば早く燭を立てて物色を弁じ、嫌疑を去る。事有れば則ち進みて之を恪み、事無ければ則ち静かにして気を安んず。凡そ大丈夫燕居の間、其の独りを慎むこと此くの如くなれば、則ち内疚しからず、明暗を以て礼を廃せず、心于に広く、体于に胖かに、気于に専一にして、志定向する所有りて、放僻邪侈の意発する所無し。是れ燕居の戒なり。
現代語訳
だからまず朝早く起きて身を清め、省み認め観ることを養い、座敷に出て諸士に会い、来客を待つ。あるいは弓・馬術・馬を見、飲食は速やかに済ませ、もてなしや招きはしない。食事時に来客があっても粗末な食事を改めず、一椀の飯と濁り酒を共にする。食事を下げたら手を洗い口をすすぎ、顔つきを正し、威儀を厳かにする。用事がなければ、剣を握り弓を引き、あるいは鉄砲、あるいは長槍と、それぞれの芸に親しみ、骨節を鍛え直し、進退を正し、先達を招いたり先達のもとに出向いたりして、決して忘れてはならない。長く怠れば、手足は思うように動かず、骨節は合わず、身は慣れず、体は軽くなく、技が欠けてしまう。古人(晋の陶侃)は甕(瓦)を運んで力を養った。その志を励まし力を勤めたことを、あわせて察すべきである。なお暇があれば、書を読み、兵法と武の義を講じ論じ、その事物の理を究め、その器用の制を詳しくし、ただ聖人の言うところを根本とする。日が西に傾けば夕食をとり、礼を繰り返す。朝食の礼を繰り返すのである。朝夕の食事は粗末で速いのを尊ぶ。日が暮れれば早く灯をともして物の色を見分け、疑いを招くことを避ける。事があれば進んでこれを慎んで行い、事がなければ静かに気を安らげる。およそ大丈夫が燕居の間、このように独りを慎むならば、内にやましいことがなく、明るい暗いによって礼を廃することもなく、心は広く、体はのびやかで、気は一つに集まり、志に定まった方向があって、勝手気ままで邪な贅沢の思いが起こる余地がない。これが燕居の戒めである。
解説
この章句が説くこと
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