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山鹿語類 / 士道・詳器物之用

大丈夫武器に於て平生心を盡し、其得たらん方に尋て、其利不利を考へはかるべし。人の身躰肥瘦時にかはり、輕重年々に違ふもの也。然ば武具の度量は常に考へはからざれば不可知。古來の士大夫は皆坐席に設け置て其用を先覺に究理せり。是大丈夫安に居て不忘危の故也。武具馬具すべて我用器足にあたらんことを憚るが故に、往來せんには傍によせて可置也。馬は大丈夫の足也。馬あらざらんには長途を經險阻を越ることを不可得。豈ゆるかせに可爲乎。尤可撫育。而して其制法ありて詳に可究理也。

新字:大丈夫武器に於て平生心を尽し、其得たらん方に尋て、其利不利を考へはかるべし。人の身体肥痩時にかはり、軽重年々に違ふもの也。然ば武具の度量は常に考へはからざれば不可知。古来の士大夫は皆坐席に設け置て其用を先覚に究理せり。是大丈夫安に居て不忘危の故也。武具馬具すべて我用器足にあたらんことを憚るが故に、往来せんには傍によせて可置也。馬は大丈夫の足也。馬あらざらんには長途を経険阻を越ることを不可得。豈ゆるかせに可為乎。尤可撫育。而して其制法ありて詳に可究理也。

書き下し

大丈夫武器に於て平生心を尽し、其得たらん方に尋て、其利不利を考へはかるべし。人の身体肥痩時にかはり、軽重年々に違ふもの也。然ば武具の度量は常に考へはからざれば不可知。古来の士大夫は皆坐席に設け置て其用を先覚に究理せり。是大丈夫安に居て不忘危の故也。武具馬具すべて我用器足にあたらんことを憚るが故に、往来せんには傍によせて可置也。馬は大丈夫の足也。馬あらざらんには長途を経険阻を越ることを不可得。豈ゆるかせに可為乎。尤可撫育。而して其制法ありて詳に可究理也。

現代語訳

大丈夫は武器について、ふだんから心を尽くし、それに通じた人を尋ねて、その利・不利を考え計るべきである。人の体の肥え痩せは時に変わり、体の重さや力は年ごとに違うものである。だから武具の寸法や重さは、常に考え計っていなければ知ることができない。古来の士大夫はみな座敷に武具を備え置いて、その用法を先達に究めた。これは大丈夫が安らかな時にも危うさを忘れないからである。武具・馬具はすべて自分の使う道具であり、足が当たるのをはばかるので、行き来するときは脇に寄せて置くべきである。馬は大丈夫の足である。馬がなければ長い道のりを行き、険しい所を越えることはできない。どうしておろそかにできようか。最もよく養い育てるべきである。そしてその扱いには法があって、詳しく究めるべきである。

解説

本章は武具と馬の心得である。体格や力は年とともに変わるから、武具の寸法や重さは常に見直さねばならないという指摘は具体的で、泰平の世の武士が形だけの武具を持つことへの戒めでもある。「安に居て危を忘れず」は『易経』繋辞伝の「安くして危うきを忘れず」を踏まえる。馬を「大丈夫の足」と呼び、よく養えと説くのも実戦の感覚である。現代でいえば、仕事の道具や技能も自分の状態に合わせて点検し続けなければ、いざというときに役に立たないということになる。

この章句が説くこと

武具馬備え安不忘危武士点検

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